直径はどーんと15㌢。一般的なシュークリームの5倍ほどある大きさで40年以上に渡り、スイーツ好きの視線を集め続けているのが、サブール(本店=和歌山市卜半町)の「キャベツ」です。長く愛される地元の味を紹介する「和歌山味物語」。今回は4店舗を構える同店の看板商品について、駒井秀行専務に聞きました。

 

大きな洋菓子 四畳半から誕生

 秀行さんの祖父、喜彦さんは今、サブール本店がある場所で和歌浦せんべい店を営んでいました。近鉄和歌山店内で焼く野球カステラも人気でした。

 サブールを創業したのは秀行さんの父、良章さん。1979年、せんべい店の一角に四畳半ほどのスペースを借り、ケーキの販売を始めました。ただ、店は大通りに面しておらず、人通りは多くありません。「お客さんの目を引くため、何か驚いてもらえるものを」と発案したのが、キャベツでした。

 直径15㌢、高さは8㌢ほど。シュー生地をパイ生地で覆った特製の皮の中に、クリームがたっぷり入っています。カスタードと抹茶の2種類で、本店では注文が入ってからクリームを詰めます。

 ナイフとフォークで切り分け、何人かでシェアするのが王道。一方で、丸々1つ食べるファンも少なくないそうです。秀行さんは「生石高原の庭先たまごを使ったカスタードクリームは、濃厚ながらもさっぱりとした風味を守っており、1人でも最後まで食べていただけるんだと思います。その場合、上の皮を切り取り、その皮で中のクリームをすくって味わう方法がおすすめですね」と笑顔を見せます。

 

 

▲商品名は、フランス語でシューが「キャベツ」を意味することから。カスタード、抹茶の2種類。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝名工〟受章した 父の味を継ぐ

▲和歌山県内の食材を使った「紀の郷」ブランドはじめ、充実の焼き菓子は贈答品にぴったり

 「小さいころはあまり店のケーキを食べさせてもらえませんでした」。そう振り返る秀行さんがキャベツを初めて口にしたのは小学5年です。「そのおいしさに驚きました。『自分はこの店を継ぐんだな』、そして『この味を継ぎたい』と思ったのを覚えています」

▲店内には父、良章さんが受章した「現代の名工」の盾

 2004年に厚生労働省の「卓越した技能者の表彰」(現代の名工)を洋菓子部門では県内で初めて受章した良章さんは21年、他界。父が残したレシピを守り、さらに磨きながら、秀行さんは新たなケーキの開発に余念がありません。

 「寡黙な父でしたが、今までのレシピを大事にしながらも、新しいことに挑戦し、作りっぱなしにせず、常に改良を怠らないようにと教わりました。温故知新ですね。目標は生前の父と同じ。現在ある商品のさらに上を行き、店名の〝サブール〟(フランス語で「風味」の意味)を商品名に付けたいと思える、自信のお菓子を作ることです」

 

サブール

〈本店〉和歌山市卜半町22
9:00〜21:00 年中無休
電話 073-422-8092
※本店のほか、高松店、近鉄和歌山店、イオン和歌山店の3店舗

(ニュース和歌山PLUS87号/2022年6月24日発行)