スッキリした辛口でキレのある清酒、世界一統。和歌山に根付いた老舗酒蔵の酒として明治時代から親しまれています。一つの味にとどまることなく、伝統の技術をさらに磨き、新しいテイストを取り入れた新銘柄開発へ常に挑戦が続きます。長く愛される味にスポットをあてる「和歌山味物語」。6代目蔵元の南方雅博さんに思いを聞きました。

 

籾蔵譲り受け 熊楠の父、創業

 紀州侯の籾蔵を譲り受けた南方弥右衛門が明治17(1884)年、南方酒造を興しました。世界的博物学者である南方熊楠の父です。和歌山で造られた酒として人気を博し、明治の終わりには二代目常楠の縁で大隈重信が「酒界の一統たれ」と「世界一統」と名付けました。

 その後、空襲で酒造設備を焼失したものの、直ちに復興。高度経済成長期に生産能力を伸ばし、1971年に社名を世界一統に改めました。

 熱かんでも冷やでも飲みやすい清酒「世界一統」は常に主力ですが、77年には華やかな香りが特徴の吟醸酒「イチ」を、91年には、熊楠生誕120年をきっかけにキレとコクが調和した本醸造「熊楠」を発表しました。

 

 

 

 

 

 

▲和歌山大空襲で蔵のすべての設備を焼失。1954年、復興のタイミングでかつての酒造りを再現する絵を専門家が描きました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝承と改革で うまさの先へ

 新銘柄への挑戦は21世紀になっても止まりません。異業種で働いていた南方雅博さんが2007年に東京から和歌山の蔵に戻ってきます。すぐに新時代の酒を目指し、伝統の名前を冠し、旨みの際立った純米吟醸「南方」と、果実王国和歌山にこだわった和のリキュール「和歌のめぐみ」の製造に着手、翌年発売しました。近年は「南方」が日本酒の4割を占め、また、「和歌のめぐみ」は蔵の一大ブランドとして、すっかり定着しています。

 また、世界にも目を向け、今や売上の4分の1は輸出です。「海外を飛び回った熊楠に習い、グローバルに羽ばたけました」

 今年(2022年)は、発売から即完売が続く、究極の辛さを実現した極辛純米「南方」を4年ぶりに再販するなど、常に歩みを進めています。「熊楠が取り組んだ粘菌、酒造りで重要な麹菌といずれも菌が共通点。私たちの役割は『うまさの先へ』のスローガンのもと、伝統文化を引き継ぎながら改革を続け、酒文化と熊楠の功績を現代に、また、後世にお酒を通して伝えることです」と目を輝かせています。                                                                                                                                                            

▲限定醸造「南方」シリーズ。主力は純米吟醸と超辛口

▲清酒「世界一統」とリキュール「和歌のめぐみ」シリーズ。国内外の酒コンテストで数々の受賞歴があります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界一統

和歌山市湊紺屋町1-10
電話073-433-1441
ホームページ  http://www.sekaiitto.co.jp

(ニュース和歌山PLUS85号/2022年4月29日発行)