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 和歌浦の浅瀬は何世紀も前から旅人や漁師に好まれています。午後の光を浴び、緩やかに潮が流れています。徳川の将軍から潮干狩りをする観光客まで、昔から人々はこのユニークではかない干潟に親しんできました。海水と淡水が混じり合う浅瀬は、かつて海苔(のり)の養殖が盛んでしたが、今は環境の変化により見られなくなりました。

 2010年にこの光景をカメラに収められたのは幸運でした。竹の支柱を立て、海南市近郊で作られたチクチクとしたシュロの縄をくくりつけています。繊維質のある縄が、潮に流されて来た海苔を捕らえます。漁師たちは巧みに竹竿を干潟に立てていました。この光景がまた和歌浦に戻ってくることを願います。

※ニュース和歌山第2・4水曜号掲載。次回は11月25日号です。

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サイモン・ワーン(Simon Wearne)

オーストラリア出身の写真家、映像ジャーナリスト。2008年に来日し、和歌山大学観光学部の特任助教を務めるかたわら、太地町の捕鯨文化をユネスコの産業遺産に登録するため、文化財の独自研究と調査を進めている。

(ニュース和歌山2015年11月11日号掲載)