《回答者》
◆脳神経外科
貴志川リハビリテーション病院
亀井 一郎院長

 頭にできたたんこぶを指して、「たんこぶができているから大丈夫」と言われたことがある人も多いと思います。でもそれは真っ赤なウソ、あるいは間違った言い伝えです。

 ちょっと打った程度の、軽い頭の打撲を想像してみてください。たとえたんこぶができてもできなくても、誰も脳のケガなんか疑わないでしょう。子どもさん、特に男児などは遊びの最中に、しょっちゅう頭を打ちます。でも子どもは意識を失うような強烈な打撲でない限り、たんこぶの有無にかかわらず、また遊びに熱中しますよね。

 逆に、交通事故などで激烈な頭部外傷(脳挫傷など)を負った患者さんには、たいてい大きなたんこぶがみられます。これは、たんこぶができるほど強い衝撃があったということです。

 そもそもたんこぶとは、頭部打撲によって頭皮の直下にできた硬い血腫(血のかたまり)のことです。通常、頭皮の下には皮下組織、その下には頭蓋骨があり、その下に膜につつまれた大切な脳があるのです。つまり、たんこぶが脳をケガからまもっているのでは決してありません。脳をケガからまもっているのは頭蓋骨です。

 たんこぶの有無よりも、意識の低下や嘔吐の有無、頭痛の強さが問題になります。

(ニュース和歌山/2021年4月25日更新)