《回答者》
◆脳神経外科
貴志川リハビリテーション病院
亀井 一郎院長

 その症状は、末梢神経障害の一種で、橈骨(とうこつ)神経麻痺のようですね。橈骨神経麻痺は、パートナーへの腕枕で起こりやすいことから「ハネムーン症候群」「サタデーナイト症候群」と呼ばれたりもします。一見ロマンチックな名前ですが、無理な姿勢で寝たことが原因であることが多いです。机に突っ伏して、腕の上に自分の頭を乗せて寝てしまったり、横向きに寝転んで自分の腕を枕にして寝た後でも起こります。

 末梢神経とは、脳や脊髄などの中枢神経から分かれて、全身の器官や組織に分布する神経を指します。身体の隅々の情報を、中枢神経である脊髄や脳に伝えたり、また逆に、中枢神経からの指令を筋肉や内臓に伝えたりする、いわば現場の働きを担った神経です。

 末梢神経の一つである橈骨神経は、鎖骨の下から上腕・前腕・手に至る神経で、手の感覚を認識したり、手首や指に運動の指示を出したりします。この橈骨神経が長時間圧迫されると、手、特に親指側がしびれ、手首から先が垂れ下がって上に反らすことができない、いわゆるドロップハンド(下垂手)になります。朝目覚めたときに気づいて、びっくりすることになります。しかし大抵は数週間で自然に治っていきます。

(ニュース和歌山/2022年12月18日更新)