《回答者》
◆外 科
楽クリニック
藤田  定則院長

 最近、おしりのかゆみが治らず、つらいと受診される人が増えています。肛門がかゆいと「もっと清潔にしよう」と思い、排便後に毎回温水便座で洗浄したり、お風呂で石鹸をたっぷりつけてこすり洗いしたり、市販のおしりふきで念入りに拭いている方が多くみられます。しかし、実はこれらの行為が、かゆみ症状をさらに悪化させているのです。

 肛門をきれいにし過ぎてはいけません。本来、肛門の皮膚には便や細菌から皮膚を守るバリア機能が備わっているのですが、肛門周囲を過剰にきれいにすることは、わざわざその機能を壊してしまっていることになるのです。

 洗い過ぎると皮膚を保護する脂分(あぶらぶん)がとれてしまい、潤いや皮膚の抵抗力が弱くなります。その結果、肛門が傷つき、炎症が起こり、かゆみやヒリヒリした痛みがでてきます。赤ちゃんは新陳代謝がよく、おしりふきで拭いても常に皮膚が修復されるため問題ありませんが、大人の皮膚はそういう訳にはいきません。

 温水便座の設置が普通になり、肛門洗浄が習慣化している方が多くなりましたが、肛門の皮膚を傷め、かゆみの原因にもなりますので、きれいにし過ぎないよう気をつけましょう。

(ニュース和歌山/2023年3月26日更新)