国道24号線沿いのケーキ店「匠・太平」。ホームページはなく、ほとんど宣伝していないにもかかわらず、いつもにぎわう話題の店です。ガラス張りの厨房で、一心にお菓子に向き合うのは、オーナーシェフの太田光昭さん(55)。西宮の老舗洋菓子店で修業し、身につけた〝財産〟が、二度三度と食べたくなる「幸せな味」を作り出します。

 

納得した素材を

──ショーケースのお菓子に目が奪われます。

 「朝から仕込み、でき上がった新鮮なケーキを並べています。かんきつ類や桃といった果物は地元の農家さんから直接仕入れており、いまの季節は桃のショートケーキが好評です」

──おすすめは?

 「クッキーです。封を開けたときに広がるフレッシュバターの香りとサクサクの食感、上品な甘さが自慢です。15種類あり、それぞれ個性を楽しんで頂けます」

──こだわりは。

 「素材です。自分が『これを使いたい』と納得したものだけを厳選しています。たとえば牛乳は、各地の牧場を訪ね歩き、オーナーがどんな思いで酪農に取り組んでいるのか、何を目指しているのかじっくりと話を聞き、その信念や生き様に共感できたところと契約しています。砂糖は、まろやかでやさしい甘さのオーガニックシュガーを産地から取り寄せ。フレッシュバターは風味とコクが豊かなオリジナルです」

 

 

 

 

 

 

 

修業で得た財産

──出身は?

 「滋賀です。子どものころからお菓子を食べることと作ることの両方が好きで、菓子職人の道に入りました。2010年にこの店をオープンするまでは、西宮市の甲陽園にあるケーキハウスツマガリで20年間修業をしていました」

──どのような毎日でしたか。

 「お菓子作りが楽しくて、成長できることがうれしくて、夢中で過ごしました。26歳のとき、商品開発を任され、それ以降は、どうすればおいしいお菓子ができるか、甘みはどうかバターはどうか、増やすのか減らすのか、自分で考え、毎日毎日、改良と試作を繰り返しました。満足のいくものができても、そこがゴールではありません。さらに良いものができないか、変えるべき点はないか、翌日からまた改良に取りかかる。いまふり返ると〝闘い〟でした。でも、あの日々があったからこそ、本物の知識や技術、味覚が身につけられたと感じています。これこそ私の誇りであり財産です」

──和歌山へ来たきっかけは?

 「フルーツの種類が豊富で海山の食材がそろっていること、自然に恵まれた温暖な気候などが気に入り、こちらへ来ました。店名の『匠』は職人の技や、ひたむきに一途に打ち込む姿勢を表しています」

──今後は?

 「おいしいものを食べると自然に笑顔があふれて、幸せな気分になります。私のお菓子を食べてくださった方に、そんな豊かなひとときを感じてもらえれば。そのためには、修業時代に培った妥協しない心で、さらに商品を改良し、進化させていくことが欠かせません。引き出しは無限にあり、アイデアがどんどんあふれてきます。私にとってお菓子作りは喜びそのもの。この喜びを『おいしい幸せ』にしてお客様に届けていきます」

【ケーキ工房  匠・太平】
岩出市中島639-4
☎0736-67-7885
9:30~18:30
㊡月曜・水曜
※祝日は営業。不定休の場合あり。要問い合わせ。
※写真のケーキは期間限定や売り切れの場合あり。

(ニュース和歌山/2023年7月22日更新)