70代女性です。数年前から歩くスピードが徐々に落ちているように感じていましたが、最近になって、横断歩道を渡りきるまでに、信号が青から赤に変わってしまいます。病院で診察を受けると「サルコペニアの可能性が高い」と言われました。何か対策はありますか。

《回答者》
◆リハビリテーション科
今村病院
リハビリテーション部
理学療法士
山本 颯貴先生

 サルコペニアは加齢や疾患により、筋肉量が減少することを指します。特に近年は、コロナ禍で外出する機会が少なくなったことから活動量や全身の筋肉量が減り、サルコペニアと診断される方が増えています。

 サルコペニアは、▽加齢のみが原因で、栄養や疾患の影響はない「一次性サルコペニア」▽運動習慣がない・寝ころんだ生活が多い・栄養不足・急性疾患や慢性疾患が原因の「二次性サルコペニア」に分類されます。筋肉量が減少すると日常生活の動作が困難になり、握力がなくなってペットボトル等の蓋が開けられない・ふくらはぎが細くなる・歩くスピードが遅くなる・何もないところで頻繁につまずく、転倒しやすくなる等の症状が見られるようになります。

 ここで、サルコペニアの危険度をチェックする「指輪っかテスト」を紹介します=図Ⓐ。特別な道具を使用せず、筋肉量をはかることができます。両手の親指と人差し指で輪っかを作り、利き足でない方のふくらはぎを指の輪っかで囲みます。ふくらはぎと指の間にすき間ができた場合は、サルコペニアのリスクが高いといえます。

 サルコペニアを予防・改善するには、生活習慣の見直しに加え、効率的な栄養補給と運動が有効です。図Ⓑは、下半身と体幹の筋肉を鍛える「立ち上がり運動」です。まず、イスに座り、胸の前で両腕を組みます。両足は肩幅程度に開き、かかとをひざより少し後ろに引きます。次に、「1、2、3、4」のリズムで立ち上がり、「5、6、7、8」でゆっくり時間をかけて座ります。きつい場合はテーブルやイスで体を支えたり、ひざに手を置いて立ち上がっても構いません。初めは10セットを目標に、慣れてきたら回数を増やしましょう。

 日常生活の中で転倒することが多くなった等の症状でご心配の方は、近くの病院を受診し、相談の上、適切な運動指導・リハビリを受けていただくことをおすすめします。

 (ニュース和歌山/2023年7月23日更新)