《回答者》
◆外 科
楽クリニック
藤田 定則院長

 痔ろうは、肛門の奥の直腸から肛門周囲の皮膚にむかって、トンネルができる病気です。肛門近くが腫れ、痛みを伴い、トンネルができてしまうとそこから膿が出ます。

 その多くは、肛門周りに膿が溜まる肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)が悪化して発症します。下痢や温水便座の常用などによる細菌感染から起こることがほとんどですが、時に切れ痔や腸疾患のクローン病が原因となることもあります。

 自然に治ることは極めて少ないため、手術が必要になります。放っておくと重症化し、治療が難しくなります。軽症であればトンネル部分だけの切開手術で済みますが、肛門の筋肉に影響が及ぶほどになると複雑な手術となるため、完治まで時間がかかります。また、まれにですが「痔ろうがん」になることもあるので、注意が必要です。

 最近では、切開せずに治す「シートン法」が広く普及しています。膿のトンネルにゴムひもを通す方法で、治療期間は長くなりますが、肛門の変形や便漏れ、再発が少なく、日帰り手術が可能です。

 痔ろうの症状を自覚している方は重症化する前に医療機関を受診し、早い段階での治療をお勧めします。

(ニュース和歌山/2023年10月28日更新)