《回答者》
◆整形外科
貴志川リハビリ テーション病院
手外科専門医・足の外科認定医
整形外科専門医
谷口 泰德 副院長

 古文書に豊臣秀吉には指が6本あったとの記録が残っています。秀吉の家来であった加賀藩主の前田利家の書物『国祖遺言』には、「太閤様は右手の親指が一つ多く六つあった」と記されています。またポルトガルの宣教師ルイス・フロイスが書いた『日本史』にも「秀吉の片手には6本の指があった」と記されています。これらの資料から秀吉の右手には指が6本あった可能性があります。

 手外科専門医の観点からも、この説は真実かもしれません。それは生まれつき親指が2本ある母指多指症(ぼしたししょう)と呼ばれる先天異常があるからです。豊臣秀吉がこの母指多指症であったのであれば、右手に指が6本あっても不思議ではありません。この疾患は手の先天異常の中で最も多くみられます。胎児の親指がお母さんの胎内で形成されて行く過程で何か障害が発生し、1本の親指が2本になることで起こります。手は機能的にも見た目も大変大事です。そのため1歳頃に手術的治療を行います。治療では正常に近い親指をつくることを心がけて手術を行います。母指多指症の形態によっては、2歳頃まで待って手術を行うこともあります。治療は手外科専門医のいる先端医療施設で行われています。

(ニュース和歌山/2024年1月27日更新)