《回答者》
◆循環器内科
みなかた クリニック
南方 常夫院長

不飽和脂肪酸はシス型とトランス型に分けられ、トランス型の構造をもつ脂肪酸を「トランス脂肪酸」といいます。

 牛や羊などの反芻動物では、胃の中の微生物によってトランス脂肪酸が作られることから、肉や牛乳などの乳製品に微量のトランス脂肪酸が含まれます。また、植物油や魚油から油脂を製造する際にトランス脂肪酸ができることがあり、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどを原料としたパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子や揚げ物にトランス脂肪酸が含まれることがあります。さらに、油を高温で処理すると、トランス脂肪酸ができることがあります。

 日常的にトランス脂肪酸を摂りすぎている場合は、心臓病のリスクが高まるといわれます。WHOは、トランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%以下にするよう勧告しています。日本では、トランス脂肪酸についての表示義務や濃度の基準値はありませんが、近年、食品業者の自主的な努力により、商品に含まれるトランス脂肪酸の濃度が低くなったことが確認されています。

 ただ、日本人においては、トランス脂肪酸という一成分だけでなく、脂質や塩分の摂りすぎに注意する必要があります。

(ニュース和歌山/2024年4月28日更新)