英語で落語を披露する小学3年の江川心生(しんき)くんと、熊野や高野を英語で案内するガイドの養成講座を始めるKIGA。英語を生かした両者の取り組みを紹介します。

 和大附属小3 江川心生くん バイリンガル落語を一席

16012389_sinki 「Once upon a time(昔々、あるところに)…」。着物に身を包み、扇子や手ぬぐいを手に英語で一席──。和歌山大学附属小学校3年、江川心生くんは「抱っこし亭大好き」の名で高座に上がり、日本語と英語で演じるオリジナルの「バイリンガル落語」に挑戦している。1月31日(日)には和歌山市本町のフォルテワジマ4階で開かれる「ふくろう寄席」で披露する。

 小2でアマチュア落語グループ「わかやま楽落会」が開く子ども落語教室に通い出した。小噺(こばなし)や大喜利の練習から始めるうちに楽しさを覚え、英会話講師の経験がある母親の直子さんの勧めで、英語で演じる練習も始めた。

 日本語の落語を1週間、直子さんによる英訳を1ヵ月かけて覚え、これまで「愛宕(あたご)山」や「堪忍袋」など4演目をマスター。日本語で聞かせた後に、同じ話を英語で演じる。心生くんは「落語は聞いてくれる人も自分も面白くなる。いつも寄席が始まるときは心臓がバクバクするし、英語が飛んで頭が真っ白になることもあります」と笑う。

 毎日の練習を欠かさず、毎週日曜は「笑点」をチェック。林家木久扇(きくおう)のファンで、楽落会では、全国大会で上位に輝く雑賀小5年の勇気出し亭うな晴くんを師匠と仰ぐ。

 直子さんは「表情豊かに感情をあらわしてほしいと勧めた落語ですが、培った表現力は何にでも生かせると思います」とにっこり。指導する楽落会の池田信義事務局長は「身振り手振りがあり、話が長い『愛宕山』を最初に覚え、初めから堂々と演じて驚きました。じっくり聞かせるタイプで、英文も本格的。これから場数をたくさん踏み、もっと伸びるはず」と目を細める。心生くんは「今年の目標は、みんなに名前を知ってもらうこと。将来は人の命を救い、笑いで病気を吹き飛ばせるような医師になりたい」と夢を描いている。

 ふくろう寄席は午後2時。楽落会の5人が出演。無料。

写真=英語と日本語で落語を演じる心生くん

 

 熊野・高野国際語り部の会 通訳案内士養成に一役

16012389_katari 世界遺産の熊野古道や高野山を訪れる外国人観光客が増える中、英語で案内できる人材の育成に一役買おうと、KIGA(熊野・高野国際語り部の会)は「和英語り部講座」を2月に始める。東道代表は「和歌山の良いところを海外へ伝えたいとの目的を持ち、ライフワークにしようと考える人に受講してほしい」と呼びかける。

 外国人に付き添い、報酬をもらって外国語で旅行案内をする場合、国家資格の「通訳案内士」が必要。ただ、高野・熊野地域については和歌山県が2012年度に設けた「特区通訳案内士」の試験に合格すれば有償でのガイドができる。特区通訳案内士には現在、103人が登録している。

 04年発足のKIGAは、県のコミュニティビジネス創出支援事業として、同年から2年間、英語での語り部講座を実施。さらに英語と日本語で書いたガイドブック『熊野・高野へのふるみち』の中辺路版と紀伊路版を発行した。

 特区通訳案内士試験の参考にと開く今回の講座には、毎月第2、3木曜に和歌山市内で歴史と英語を学ぶ研修会と、実際に熊野古道を歩く第4土曜の現地講座がある。研修会で歴史を指導するのは、語り部として約30年間、熊野古道を歩く東代表。「歴史や、いにしえ人がどんな思いでこの道を歩いたのかを伝えられる人材を育て、県の観光発展に貢献したい」と意気込む。

 すでに受講を決めたのは、特区通訳案内士に登録する海南市の平石保雄さん。「昨年、中辺路から湯ノ峰までバスに乗った際、乗客30人ほどのうち、半分が外国人でした。散策中に出会う人も外国人が多い」。歴史の解説に加え、「公共交通が不便な場所が多いため、移動のサポートも重要。足を痛めた外国人を見かけたこともあり、そういう意味でもガイドは必要です」と話す。

 研修会は和歌山市三木町堀詰のBMC英会話で開催。定員10人、年会費2000円、月3000円(現地講座代含む)。現地講座は各回定員25人で、1回500円程度。現地講座だけの参加も可。講座に先駆け、説明会を1月28日(木)午後2時からBMC英会話で開催する。詳細は東代表(073・478・2711)。

写真=KIGAは2015年まで5年間、「熊野古道歩こう会」を開いた

(ニュース和歌山2016年1月23日号掲載)