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 1920年代に描かれた和歌山市の鳥瞰(ちょうかん)図をもとに、茨木市の画家、森馬康子さんが現在の風景に置き換え、「廿一世紀(にじゅういっせいき)和歌山市鳥瞰図」としてよみがえらせた。3月26日に和歌山市民会館へ寄贈。「和歌祭や加太サニータウンの眺めなど何度も和歌山に足を運び、印象的だった風景をアレンジして盛り込みました」と話している。

 ベースになった鳥瞰図は、大正から昭和にかけて活躍した絵師、吉田初三郎によるもの。当時、観光のメッカとして栄えた新和歌浦を中心に広がるパノラマ風景を上空から切り取り、海上の船や車までちみつに描き込んでいる。

 森馬さんは大阪を拠点に絵画や版画を制作。今回、和歌山の文化活動を支援するNPO銀聲舎(ぎんせいしゃ)と協力し、2013年秋から1年半かけ、取材を重ねながら筆を進めた。

 廿一世紀版は、和歌浦にひしめいた旅館や水軒浜の松が姿を消す一方、線路を走るラピート、高速道路を行き交うトラックと時代の変遷を表した。桜咲く紀三井寺、5月の和歌祭で和歌浦を練り歩く人々、湯浅の山に実るみかんと、一枚に四季折々の見どころを集めた。

 細部にこだわり、和歌山城はツキノワグマのベニー、白浜のアドベンチャーワールドにパンダ、貴志駅のたま神社を小さく描き込んだ。森馬さんは「私自身が水族館好きで、絵の中に大阪の海遊館、すさみ町のエビとカニの水族館などたくさん入れました。寂れてしまった景色の中にも名所が残っている。地理の把握に苦労しましたが、見た人に『ここ知ってる!』と盛り上がってもらえれば」とにっこり。

 同館1階に展示。また、銀聲舎HPで縮小版をダウンロード可。

写真=銀聲舎の松尾寛さん(右)とともに、鳥瞰図を説明する森馬さん

(ニュース和歌山2016年4月2日号掲載)