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 木工製品だけでなく、梅干しやラーメンなどの価格に、林業振興への寄付金を盛り込んだ商品が誕生した。地元林業者や企業でつくる「木の国エコリレー推進協議会」の企画で、「木の国クレジット」と書かれたシールが目印。市民が気軽に環境保全活動にかかわれる統一ブランドとして、今春から販売を始めた。石橋幸四郎会長は「かつて林業が盛んだった和歌山ですが、今は山や森を活用する機会が減っている。多くの市民、企業に参加してもらい、産業の再生につなげたい」と意気込んでいる。

 木の国クレジットは、二酸化炭素排出量や吸収量を数値化し、企業間で取り引きできる「カーボンオフセット」制度を活用している。工場などで排出される二酸化炭素の削減に社会貢献として力を入れる企業が、削減しきれなかった排出分を林業者に料金を支払って引き取ってもらえる制度で、国が2008年に林業振興策として始めた。

 推進協議会は、制度の利用を考える地元10社が立ち上げた。参加企業は商品製造の際に発生した二酸化炭素量に相当する料金を林業者に支払い、その費用を商品に上乗せする。企業の社会貢献と、消費者が間接的に森林保全活動に寄付できる仕組みだ。

 紀州材や間伐材を使った商品の販売・消費が主流だった従来の林業振興策と異なり、複数の企業が業種を越えて参加できるのが特徴。梅干しや柿、ドレッシングといった食料品をはじめ、生活雑貨や飲食店の料理など協議会に加盟する10社の23商品を環境貢献型商品として登録している。

 和歌山市湊御殿の宮坂木材産業は、木の粉と樹脂で作ったブロックを販売。製造で燃料や電気を使用する際に二酸化炭素が発生し、排出量を林業者に引き取ってもらう際に支払った料金を商品価格の一部に充てる。

 ぶらくり丁で定期的に開かれているポポロハスマーケットで体験ブースを設けたところ、多くの子どもたちが集まった。ブロックを購入した小学生の子をもつ松永久視子さんは「森林保全などの活動に参加したくても、時間も機会もなかった。買うことで力になれるのは手軽で便利」と喜ぶ。

 同社の宮坂雄子さんは「1社ではブランド化が難しかったが、複数の企業が連携することで、取り組みの発信につながる」と力を込める。

 岩出市の飲食店「とんかつちゃんこ さかぐら」では、紀州備長炭を使ったラーメンとカレーの料金に二酸化炭素の引き取り料が含まれる。西川寛社長は「食材だけでなく地域貢献でも和歌山にこだわりました」と笑顔を見せる。

 県内の林業は近年、厳しさを増し、県産丸太杉1本の価格はピーク時(1980年)の4万5000円から1万3000円に下落。林業従事者も4000人から1000人に減った。木の国クレジットで集まった資金は、広川町の東濱植林と田辺市の山長商店に二酸化炭素を引き取ってもらう費用に充てる。東濱植林の神林正紀さんは「植林だけでなく、木の良さや森を守る意識を広げるため、森林作業の体験会にも生かそうと思います」と喜ぶ。

 県森林組合連合会の谷関俊男さんは「山の保全は環境への貢献だけでなく、土砂災害を防ぐなど公益性が高い。森を守る気運が高まれば」と期待。協議会事務局のわかやま環境ネットワークは「業種を問わず取り組める地域貢献事業。より多くの企業に参加を呼びかけ、商品数を充実させたい」と描いている。

 同ネットワーク(073・499・4735)。

写真=人気を集める宮坂木材産業のブロック

(ニュース和歌山2016年5月21日号掲載)