食用や駆除のため狩猟を行う県猟友会の会員が昨年、増加に転じた。イノシシやシカ、アライグマに農作物を食べられた農家が、わな猟免許を取得するケースが増えたからだ。一方、ジビエ人気から自分で狩って食べる人や、マンガ「山賊ダイアリー」の影響でハンターにあこがれ、銃免許を取る若手も現れている。

 狩猟免許には、わな猟、あみ猟、第1種銃猟(ライフル銃、散弾銃)、第2種銃猟(空気銃)の4種類ある。昨年、県内の猟友会員は、わなが1024人、あみが0人、第1種が1449人、第2種が23人で、計2496人。前年比で30人増となった。記録が残る1997年の3401人から毎年減少。10年ほど前に一時的に増えたが、その後も減少が続いていた。

 県猟友会の水浦健和歌山支部長によると、免許所持者は食糧難の戦後に急増した。9割以上は第1種だったが、昭和終盤以降は高齢化と銃離れにより減少が続いた。

 ハンターが160716_shuryou減ると野生動物による農作物被害が目立ち始め、わな需要が高まった。県農業環境・鳥獣害対策室は「耕作放棄地の増加に伴い、イノシシやシカが人家付近に出てきた。近年の農作物被害は多いときで3億5000万円と、2億9000万円ほどだった10年前から増加。捕獲数は増えたが、それ以上に被害が大きい」と説明する。

 わな免許取得者は増え続け、過去3年だけでも銃の3・5倍に当たる465人。紀の川市北勢田の吉田安葵子さんは「5年前から米、柿、ハッサクがイノシシにやられ、米が半分ぐらいしか取れなくなった」と昨年取得。わなと金網を仕掛けると、被害はなくなった。

 一方、シシ肉をもらったことから、「獲った物で暮らしたい」と考えた和歌山市加太の溝部名緒子さんは昨年、第1種とわな免許を取った。以来、家での食事には仕留めたイノシシやシカの肉を使う。若手ハンターでグループを作り、情報交換するが、中にはマンガ「山賊ダイアリー」の影響で狩猟に関心を寄せた人もいた。

 県は3年前から、農作物被害者にわな猟を紹介、同時に狩猟の魅力を伝えるイベントを開いてきた。猟友会も2年前、模擬銃や銃のシミュレーション体験の場を設けたところ、約20人が体験し、20、30代の8人が免許を取得した。

 銃に対し厳しい目が向けられる反面、県は「ルールを守った狩猟は、有害動物の駆除、ジビエ料理の味わいにつながる」とアピールする。被害対策や、食、マンガときっかけは様々だが、狩猟免許への関心が少し高まっている。

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 ◎狩猟の魅力研修~狩猟生活の始め方…23日(土)午後1時半、和歌山市栗栖のJAわかやま中央営農センター。銃猟の魅力講演、ジビエ料理試食、狩猟シミュレーター体験と、模擬銃、わなの実物展示。無料。県農業環境・鳥獣害対策室(073・441・2906)。

(2016年7月16日号掲載)