海南市 和歌真喜子さん 一子相伝の技 今に

160910_suicyuka1 水の中で色鮮やかに開くバラにダリヤ、スズランにアジサイの造花…。松坂慶子が歌う『愛の水中花』のタイトルにもなるほど昭和を彩った懐かしの水中花(写真左)。海南市の和歌真喜子さん(57)は、親族から70種類、40万個分の材料を引き継ぎ、制作に励んでいる。「水に入れた瞬間、紙が含んでいた空気が気泡になる。それがたまらなくきれいで迫力があります」と瞳を輝かせる。

 叔母夫妻が東京で営んでいた水中花の製作所を廃業した際、和歌さん家族が大量の完成品と材料を譲り受けた。花びらには台湾の天然記念物「通草木」の幹、葉の部分は、現在採取が禁じられる高野山の万年ゴケが使われている。

 約30年前の材料は劣化しておらず、水に入れると3年ほど美しく咲く。和紙と違い、色あせたり、水に溶けず、一度引きあげてもまた使えるのがポイント。「通草木に着色する方法は叔父が特許を取っており、『一子相伝の技術だ』とよく言っていました」と目を細める。

 ここ数年は、8月に黒江で開かれる下駄市で水中花を販売。懐かしさと美しさが評判を呼んだ。さらに今年、テレビ番組で紹介されたのをきっかけに、問い合わせが殺到。販売する同市黒江のぬりもの館には、四国から買い求めに来る客、1万円分以上買い込む客も現れた。

160910_suicyuka 「材料を分けてほしい」「作り方を教えて」との声を受け、9月4日に初めてのワークショップをぬりもの館で実施。花を紙テープとボンドで茎になる手芸用のワイヤーに固定し、2時間ほどかけて作った。娘と参加した同市の山野あき乃さん(68)は「夜店などで水中花をよく見かけた若いころを思い出し、懐かしい気持ちになりました。やはり癒やされますね。玄関に飾ろうかな」と満足げ。

 今後はワークショップの定期開催や手作りキットの販売を計画。和歌さんは「残された材料は叔母たちの形見のように感じられる。すべての材料を使い切り、〝最後の一個〟を作るのが夢です」と張り切っている。

 水中花は同館ほか、JR海南駅内物産観光センター、海南駅前一番街商店街のファーストガーデンで販売。

(ニュース和歌山2016年9月10日号掲載)