スドウPユウジさん 景色になじむ独自の表現

160914_2a 看板やチラシのデザインを手がける和歌山市岩橋のスドウPユウジさん(37)は、かつて全国各地の観光地で流行した顔出し看板を製作している。ペンキでわざとサビを描いた独自の表現で、どこか懐かしく、周囲の景色になじむ作風が持ち味。「携帯電話などで気軽に写真が撮れ、画像をインターネットで発信するSNSが普及した今、顔出し看板になじみの薄い若い世代を中心に見直されています。古さを強調することで、その看板が歩んできた歴史や街の移り変わりを想像できます」と魅力を語る。

 大阪府河内長野市出身。幼少期から絵画教室に通い、中学で油絵を始めた。このころから絵描きを志し、高校卒業後、旅行で訪れたニューヨークで、それまで触れたことのなかった海外の作家の感性に衝撃を受けた。帰国後、新しい自分を見つけるために沖縄で7年間暮らし、音楽と絵画パフォーマンスを組み合わせたライブペイントを始めた。

 顔出し看板は沖縄で挙げた自分の結婚式の際に作成。出席者に好評で、以降、友人の式やイベント会場に飾るようになった。和歌山には2011年に移り住み、これまで紀の川市観光協会や喫茶店、ドーナツ店などの7作品を手がけた。

 特徴は、原色に近い色を多用し、茶色のペンキでサビを付けた〝味のある〟看板。和歌山市岩橋の喫茶店ピュアの依頼で製作した作品は、45年前の創業時に作られた看板をイメージし、緑に囲まれた当時の風景と店を描き、サビを足した。店主の松本雅之さん(40)は「お客さんがシニア世代の常連さん中心でしたが、看板に興味を持った子どもたちが親や祖父母を連れて来るようになりました。年配の方は特に懐かしんでくれます」と喜ぶ。

 観光地などの看板は、顔を入れる穴が真円に近いものが多いが、看板とのフィット感にこだわり、やや縦長にくりぬく。「あごを出して写真を撮ると、より一体感が増します」とスドウさん。「顔出し看板も、サビも古さが特徴で、世代によって懐かしさや新鮮さを感じられるのが良い。見た目は古いけど実は新しいという、イメージを覆す楽しさを伝えてゆきたい」と話している。

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 ライブペイント…10月10日(月)午後7時半、同市紀三井寺のデサフィナード。ピアニストのスガダイローさんらが演奏するフリージャズの音色に合わせ、スドウさんが即興で表現する。3500円、当日4000円。同店(073・441・6166)。

(ニュース和歌山2016年9月14日号掲載)