中高年の生涯スポーツとして定着したマスターズ陸上。和歌山市在住で、日本の草分けである日本マスターズ陸上競技連合会長、鴻池清司さんが長年の夢として温めてきた複数競技でのマスターズ初のオリンピック「マスターズピック」実現へ動き出した。今秋の国際・全日本マスターズ陸上競技大会を足がかりに機運を高める考えで、「オリンピックなど考えもしなかった人も、競技を続けていれば、マスターズピック出場の夢を持てる」と強調する。

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 40歳だった1977年、スウェーデンでの第2回マスターズ陸上世界大会に400㍍ハードルや走り幅跳びで出場した鴻池さん。「元五輪金メダリストも、走るのが遅い人も、95歳の人もいた。何歳でも挑戦できるこんな大会を、ぜひ日本で」と決意した。翌春、和歌山マスターズ陸上競技連盟を立ち上げ、秋に紀三井寺陸上競技場で西日本選手権を開催。200人が参加し盛り上がりを見せると、80年に日本マスターズ陸上競技連合を結成、和歌山市で全日本大会を開いた。

 だれでも出られるマスターズ大会を通して、「生涯にわたる運動が、中高年世代の健康に役立つ」と実感した。一方で、「スポーツは勝負が付きもの」と20年前から「マスターズのオリンピック」を提唱し続ける。「5歳刻みで競うマスターズピックなら遅咲き選手にもチャンスが生まれる」との思いがあるためだ。

 実現に向けて11年、陸上、水泳など6競技で和歌山マスターズクラブを結成し、地元での盛り上げを図った。昨年6月には陸上関係者でプロジェクトチームを立ち上げ、足下を固めながら、他の競技団体へ理念を広げる方針だ。

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 鴻池さんが夢実現の足がかりとするのが、今年10月の国際・全日本マスターズ陸上選手権大会。和歌山市では2度目の国際大会となり、「国内マスターズ発祥の地から、健康づくりの場であり、勝負の場であるマスターズピックを強力に発信する」と力を込める。

 今後は、18年に近畿圏内で50歳以上が参加できる陸上、水泳、卓球の国際ゴールドマスターズ大会、20年はゴールドに加え、選ばれた競技者だけが出場できる国際選抜マスターズ選手権大会を実施し、それを発展させ24年に和歌山を含む近畿圏で陸上、水泳、卓球などによる第1回マスターズピック開催を描く。

 県水泳連盟は1月15日(日)、日本マスターズ協会公認の全国大会を秋葉山プールで初めて開く。榎本任志(ただし)理事長は「連盟としてマスターズピックの考えは持っていました。マスターズ登録者対象の全国大会を開くことで、参加者に広めたい」との考えだ。

 高齢者の筋力トレーニングを指導する和歌山大学の本山貢教授は理念について、「健康づくりをしながら、勝負をする。何歳になっても極限にチャレンジすることで、筋力を維持できる」と評価。60歳でベンチプレスを始め、80歳で世界記録を出した同市の藤田俊夫さんも「あらゆる年代の人がスポーツを続ける中で、こんな大会ができれば励みになる」と歓迎する。

 県も中高年世代のスポーツを後押しする方向で、追い風が吹く。鴻池さんは秋の大会で認知度を高めた上、「オリンピック、パラリンピックとマスターズピックの同時開催が最終目標」と見据えている。

写真上=何歳になっても出場できるのがマスターズの魅力、同下=鴻池清司さん

(2017年1月7日号掲載)