明治初期に建てられた和歌山市今福の郭家住宅を残そう──。建築史家の西山修司さんが呼びかけた「郭家住宅の会」設立総会が7月22日、今福連絡所で開かれた。登録有形文化財の建物を活用しながら魅力を広め、公的保存につなげたい考えだ。

 1877年、医師の郭百輔(ひゃくすけ)氏が建築した2階建てで、コロニアル様式と呼ばれる正面にせり出すバルコニーが特徴。西山さんは「当時の洋風建築が良好な状態で残っているのは珍しく、地域の魅力になっている」とし、古い建物が町に及ぼす影響の強さを強調する。

 会には、住宅を地元の資産と考える住民、和歌浦地区の環境整備を続ける人、古い建物をカフェや食堂に活用する経営者ら40人が参加。「郭家を中心に昔ながらの町を残したい」との声に賛同の輪が広がった。

 築140年が経ち老朽化が進むため、大規模改修が必要。登録有形文化財は相続税減額はあるが、維持管理に行政の補助はない。所有者の郭一彦さんは「個人で維持していくのは難しい。会が、公的支援を得られるきっかけになるとうれしい」。参加した同市堀止東の島村みゆきさんも登録有形文化財に住み、維持管理負担の大きさを痛感。「行政の援助がなければ、貴重な建物はどんどん減る」と危機感を募らせる。

 会は今後、月見や正月、ひな祭りなどの行事、絵画展や写真展を開催し、住宅にふれる機会を増やす。11月には県立近代美術館で保存活用に向けたシンポジウムを開く。

 西山さんは「より多くの人にこの建物を知ってもらうことが第一。その上で、『貴重な建物を残すべき』と市民の声が大きくなることを期待し、公的保存を求めたい」。

 西山さん(073・445・3633)。

写真=保存に向け協力を求める西山さん(中央)

(ニュース和歌山/2017年7月29日更新)