和歌山市西庄の洋画家、柿原康伸さん(80)が9月、戦前から続く公募展、新制作展を主催する新制作協会の会員に選ばれた。県内から38年ぶりで、「出展を始めた40年前、まさか会員になれるとは思ってもいなかった。一つの区切りを迎え、今後は体に気を遣いながらできるだけ長く描き続けたい」と喜んでいる。

 1936年に青年画家9人が立ち上げた同協会。絵画部、彫刻部、スペースデザイン部があり、最高賞の新制作協会賞は絵画部では71年を最後に「該当者なし」が続くほど審査が厳しい。今年の絵画部は応募約900点から協会賞の次点、新作家賞に7人が選ばれた。会員は、協会賞や新作家賞を複数回受賞した人が選ばれ、毎年、出展し、審査員を務める。

 和歌山工業高校卒業後、服飾生地をデザインする仕事に就いた柿原さん。30歳で油絵を始め、39歳の時に初めて新制作展へ応募した。病気で休んだ時期もあったが、復帰後も続け、2012年に絵画部賞、13年と16年に新作家賞を受賞した。

 今回出品したのは「運河とタンクの立つ街」(写真)。縦280㌢×横130㌢の大作で、掛け軸に描かれる山水画の構図を取り入れ、作品に奥行きをもたせた。モデルとなった風景は、アトリエの3階から見える新日鐵住金の工場。建物とタンクを重ねて描き、海の色を鮮やかに仕上げ、白い水鳥を散りばめた。

 「会員に選ばれたのは、作品のレベルが安定しているとの評価の証。流行を追う服飾生地のデザインは、新制作展が掲げるテーマ『都会的センス』『先進性』に通じる。今後もそれらをテーマに続けます。後進が続いてくれればいいですね」と願っている。

 柿原さんの作品は11月8日(水)まで、神戸市灘区の原田の森ギャラリーで開かれている新制作展で展示中。800円。午前10時~午後6時(最終日3時)。月曜休館。

写真=制作に励む柿原さん

(ニュース和歌山/2017年11月4日更新)