1889年創業の老舗人形店をぐらや(和歌山市本町)が、新たな和柄で人気を呼ぶ京都発のテキスタイル(織物)ブランド、SOU・SOUとコラボした着せ替え市松人形「咲(さき)×SOU・SOU」を発売した。2016年に発表した「咲」の衣装に、日本の四季や風情をポップに表現したSOU・SOUの生地を使用。発案したをぐらやの森田充子さんは「若い世代に支持されるブランド。咲ちゃんで遊んだ子は、思いやりの心を持つやさしい子になるでしょう」と目を細める。

明治創業の老舗をぐらや 京都発の人気織物ブランド SOU・SOUとコラボ

 手足を動かせる市松人形は元々、子どもが手にとって遊べるものだった。しかし、「最近、高価な衣装を着て、ガラスケースに飾られ、触れないものになってしまっている。身近に楽しめるようにしたい」(充子さん)と企画したのが「咲」だ。

 遊ぶ子どもたちの夢を壊さないよう配慮し、襦袢(じゅばん)や足袋を身に付け、人形内部を見えなくした。この上に着せるのは、着物店から仕入れた生地で作った正絹(100%絹の織物)の着物で、帯が結べるようになっている。商品名の「咲」は「やさしさが〝咲〟くようにとの思いを込めました」。

 発売から2年、全国から注文が寄せられ、順調に愛好者が増える中、さらに多くの人に知ってもらいたいと着目したのがSOU・SOUだ。SOU・SOUは「新しい日本文化の創造」をコンセプトに、地下足袋、和服、家具、雑貨などを製造・販売する。伝統的な素材や技法を使いながら、現代のライフスタイルに寄り添うものづくりを進めており、京らしさのあるモダンなデザインで、国内外にファンが多い。ユニクロの衣料品はじめ、カルビー、月桂冠の商品パッケージなど、大手企業とのコラボでも注目を集めている。

 充子さんと、夫でをぐらや社長の亨弘(たかひろ)さんは今年5月、SOU・SOUの若林剛之社長に直接会い、咲に込めた思いを伝えたところ、コラボの承諾を得られた。亨弘さんは「私も妻も以前、京都のテキスタイル会社で働いており、生地への思いは深い。伝統のものを新しい感覚で今後につないでいきたいとの気持ちが一緒で、人形メーカーではなく、小売店が企画した点も評価してもらえたと思います」と話す。

 6月に大阪であった小売業者向けの見本市、KANSAIドールピアで「咲×SOU・SOU」を発表したところ、「面白い」「今までにない発想」と好評。11月から本格的に販売を始める。

 SOU・SOUの寺川沙智衣さんは「森田さんは日本の伝統的なもので、日常から離れてしまっているものを身近な存在にと取り組まれている。私たちも昔からあるものを少しポップにするだけで、もっと親しみやすくなると考えています。今回の取り組みでも、市松人形が気軽に楽しめるものになれば」と期待している。

 をぐらや(073・423・0393)。

写真=「時代に合わせて少しずつ変えながら、伝統を守りたい」とをぐらやの亨弘社長(右)と充子さん

(ニュース和歌山/2018年10月27日更新)