玉津島保存会 塚田由里子さん初演奏会

古来から日本に伝わる管楽器、笙(しょう)の響きに触れてもらおうと、玉津島保存会メンバーで和歌山市の塚田由里子さん(51、写真)が10月14日㊊午後1時、同市和歌浦中の玉津島神社で演奏会を開く。同神社観月短歌祭での催しで、塚田さん初の単独演奏会。「雅な音色に触れ、この楽器の可能性を感じてほしい」と望んでいる。

 東京出身の塚田さん。2004年に家族と同市に移り住んだ。笙を初めて手にしたのは11年。東日本大震災が起き、「いつ何が起きるか分からない。やりたいことをやろう」と市民会館で始まった伝統文化教室で雅楽を学び始めた。

 学生時代に女声コーラスグループに所属し音楽に親しんできたが、楽器は初めて。雅楽の他の管楽器、龍笛(りゅうてき)、篳篥(ひちりき)ではなく、笙を選んだ。「『天から差し込む光を表す』と言われる不思議な音の感覚が良く、唯一、和音が出るのも魅力です」

 細い竹の管17本を椀に差し組み合わせた笙は、和音を鳴らす11通りの指の形を覚えるのが基本。数年間は時間が許す限り笙を手にし、必死にマスターした。和歌山おはなしの会語りの森の催しで演奏の機会を得て、近年は神社の祭でも吹いている。

 万葉の故地、玉津島神社で初となる演奏会では雅楽の調べの中から秋を表現する『平調調子』はじめ、笙の解説を交えながら『埴生の宿』『仰げば尊し』、またバッハの『G線上のアリア』など西洋の曲も奏でる。「笙のルーツとなる楽器は東に伝わり日本の笙、西へ伝わりパイプオルガンの原型になったとの説があります。雅楽とはまた違ったメッセージ性のある西洋音楽を笙で演奏し、自分の個性にしたい」と目を輝かせる。

 万葉の歌人、山部赤人の和歌を笙の演奏で参加者と歌うのがハイライトで、「1300年前に歌を詠んだ心に時を越えて触れたい。この海を守る思いを込めたいですね」と張り切っている。

 演奏会は無料。同神社(073・444・0472)。

(ニュース和歌山/2019年10月5日更新)