障害児や病気の子どもたちへの理解を、人形劇を通して深めてもらおうと活動する「オレンジキッズ」が発足10年を迎えた。田中賀陽子代表は「見方を変えれば味方になれる。一人ひとりどんなことに困っているのかを知ることで、子どもを見る目が優しくなり、病気や障害のある子の気持ちは楽になります」と思いを込める。11月には記念イベントを開き、小児白血病と発達障害をテーマにした2作品を披露する。

人形劇グループ オレンジキッズ〜障害・病弱児への理解広め10年

 オレンジキッズは2009年、障害児・病児教育が専門の和歌山大学教育学部、武田鉄郎教授の研究室で学んでいた院生、学部生が結成した。障害や病気があることでどんなことに困っているのか、人形劇で発信する。

 現在は同研究室以外の会員も増え、小学校教諭や幼稚園教諭、看護師ら約20人が所属する。1年前に入った元保育士の永石絵美莉さんは「練習や公演を見学し、演じる人形が一人の人間のように見えた。奥深い内容で、子どもたちや教育現場の先生たちに伝わりやすいと感じました」と話す。

 上演するのは、小児白血病がテーマの「だいじょうぶ マイちゃん」、発達障害への理解を図る「こまっているのはだあれ」の2作品。依頼のあった小学校や大学などに出向いて公演しており、昨年は12回披露した。

 「こまっているのはだあれ」はオレンジキッズオリジナルだ。感覚過敏、ルールが分からないなどの特徴がある小3のユウ。友達とうまくかかわれず、とうとう学校を休んでしまう。ある日の学級会、聞こえ方、見え方は人それぞれ違うと学んだクラスメートは、ユウのつらさを理解し──。

 発達障害児やその親、教師らに聞き取りし、約5年かけて完成させた作品。音に過敏で、リコーダーの音が苦手だったり、味覚過敏で周りからは単なる好き嫌いやわがままと受け取られたりなど、具体例を盛り込む。岡本光代副代表は「人の痛み、悲しみだけでなく、分かり合う喜びを感じてほしい。病気や障害の有無にかかわらず、支え合うことの大切さに気づける、そんな温かみのある人形劇です」と胸を張る。

 鑑賞した大人からも「しんどいのに誤解されている子どものことを、この劇で理解してもらえれば」「〝みんなとちがう〟でなく、〝みんながちがう〟に共感できた」などの感想が聞かれる。顧問として会を支える武田教授は「障害や病気のある子の微妙な気持ちの変化が、説教がましくなく、自然に伝わってくる。デジタル化の時代、ゲームに夢中になる子が多いと思いますが、思いやりや人の気持ちを、人形を通して伝えていくことは意味がある」と今後の活動を見守っている。

 10周年イベントは11月17日㊐午後1時、和歌山市栄谷の和大教育学部で。2作品を披露した後、武田教授をコーディネーターにシンポジウム「啓発人形劇の魅力と可能性~だれもが安心できる社会を目指して」を実施。無料。定員100人。希望者は氏名、連絡先、メールアドレスをオレンジキッズ(orangekids.wakayama@gmail.com)。10日締め切り。

写真上=人形劇の経験ゼロだった会員が練習を重ねて演じる

(ニュース和歌山/2019年10月26日更新)