カンボジアの教育支援を行うユニークなクラブが、和歌山市屋形町の和歌山信愛中学校・高校にある。GAC(グローバル・アクティビティー・クラブ)で、現地に贈るための募金活動を中心に行う。発足5年目の今年度は、蚊が媒介する病気で命を落とす人が現地にいると知ったことから、紀陽除虫菊(海南市下津町上)の協力を得て、オリジナルの蚊取り線香作りに取り組んでいる。

教育支援行う信愛のGAC 紀陽除虫菊と商品開発中

 同校は、国際的に活躍できる人材育成を目指す文部科学省のSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)準指定校になった2015年から希望者を募り、カンボジア研修を行っている。現地では以前、同校で英語を教えていたシスターの橋本進子さんが幼稚園と小学校を運営しており、その活動を支援するため、GACが発足した。

 校内での募金活動のほか、部員が地元の企業を直接回って協力を依頼し、集まった寄付金を毎年、橋本さんに届けている。また、信愛オープンスクールや地域のイベントでカンボジアの現状を広く伝える活動も行う。同国の貧困問題に関心を持ち、昨春入部した佐藤栞里さん(中1)は「他人事ではなく、みんなで考えたい。支援の輪を広げていけるよう、呼びかけています」と話す。

 今年度、現地で使ってもらえる新たな蚊取り線香の開発を始めた。きっかけは昨年度のカンボジア研修中、部員が蚊に刺され、その部分がはれあがったこと。部長の松村果林さん(高2)は「シスター橋本先生に聞くと、蚊に刺されてマラリアやデング熱になり、命に危険を及ぼす例がまだあるとのことでした」。

 オリジナルの蚊取り線香を作って現地に届けようと、部員34人でアイデアを出し合った。まず、渦巻き型ではなく、海外の人が関心を持ちやすくするため、富士山や盆栽、前方後円墳といった日本的な形のものを発案。また、カバンにつけるストラップやバッジのほか、アロマキャンドルなどに蚊除け効果を持たせる案も出た。副部長の布目有希乃さん(高2)は「普段持ったり、使ったりするものに結びつけ、自分たちの年代でも親しめるものができないかと考えました」と説明する。

 実現に向け、1910年の創業から100年以上、蚊取り線香を製造する紀陽除虫菊に相談。研究開発課の中道賴明さんは「特に驚かされたのが、蚊取り線香の素と型を一組にした手作りセット。使う人に作ってもらう発想はありませんでした」。業務部長の中井研二さんも「皆さん熱心で、着眼点がすごい。彼女たちの考えたものをカンボジアに持って行けるよう協力したい」と語る。

 商品開発は進行中で、現在の高校2年生が引退する5月までに形にしたい考え。昨年末、カンボジアを訪れ、日本語学校や、枯れ葉剤の影響で体の不自由な人が暮らす施設などを回った松村部長は「教育の機会や文房具など環境面で恵まれていなくても、キラキラした目で学ぶ姿勢に刺激を受けました。カンボジアの教育が少しでも充実するよう、今後も協力を続けます」と意気込んでいる。

 活動に協力してくれる企業、個人を募集中。詳細は同校、大村教諭(073・424・1141)。

写真=蚊取り線香の作り方の説明を受けるGACの部員たち

 

「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」研究成果発表会

 2月12日㊌午後1時40分、同市屋形町の同校。社会を地域から支える人材育成を目指す文科省の同事業。今年度、その指定校となった同校の生徒が「教育」「福祉」「医療」「経済」などをテーマに取り組んだ研究成果を発表する。無料。申し込みは10日までに同校専用ページ(https://forms.gle/M2uL8xxsjnBfF3BZ9)から。

(ニュース和歌山/2020年2月8日更新)