ガラスアーティスト 三浦啓子さん自伝『雲の柱』

 和歌山県立図書館やグランヴィア和歌山に作品がある和歌山市出身の三浦啓子さんが自伝『雲の柱 ガラスアーティストが行く』を1月23日に春秋社から出版した。「作品で伝えたいのは、聖書でモーセが紅海を真っ二つに割った強さ。それが今の世の中に必要だと思い、自分のこれまでを自伝にしました」と熱を込める。

 1935年、和歌山市生まれ。幼いころから絵を描くのが好きだった。教会で見た強烈な光を表現しようと、30代のころ、アメリカでステンドグラスを学んだ。

 帰国後、ハンマーで割った分厚いガラスを黒い樹脂でつなぐ独自技法を開発。ダイナミックで温かい光の表現と、優れた耐震性が特徴で、東京国立博物館や神戸の元町一番街アーケード、カリフォルニアのオールピルグリム・クリスチャンチャーチなど、国内外の建造物に作品を提供してきた。

 自伝では、生い立ち、数々の作品と創作時のエピソード、かかわりある人々との思い出を3部構成で紹介している。ハンマーでガラスを叩き割り、研究と研さんを重ね、ドイツのガラス会社と試行錯誤しながら次々と新しい表現を生み出していった日々。経済的豊かさの反面、人間本来の生き生きとした姿が失われていると感じ、日本的でエネルギッシュなステンドグラスを表現しようと突き進んできた歩みを、5年かけて書き上げた。

 「ガラスは熱くて重いから命がけ。それでも作りたいものに向かっていく強さが大切ね」と話す。

 四六判、328㌻。3080円。をぐらや(073・423・0393)、アマゾンほかで販売。

(ニュース和歌山/2020年2月29日更新)