自然博物館 臆病なウシガエル 鳴き声響く

 「ブオー、ブオー」。牛に似た低い鳴き声の主はウシガエル。新型コロナウイルス感染防止のため、臨時休館中の和歌山県立自然博物館(海南市船尾)で、日中の玄関ホールに響き渡る。松野茂富学芸員は「用心深いウシガエルが鳴くのは、極めて珍しい。お客さんがおらず、よほどリラックスしているんだと思います」と話す。

 松野学芸員によると、和歌山の自然界にいるウシガエルは4月の終わりから10月ぐらいまで鳴いている。警戒心が強いため、近づくと自分の居場所が分からないよう、すぐに鳴くのをやめる。

 同館は10年以上前から、玄関ホールの水槽で飼育。通る人の多い場所のため、日中はまず鳴かない。松野学芸員は「私が勤め始めた2012年以降、昼間に鳴いたのは2回目。前回もお客さんの少ない時期でした」。

 長引く休館の影響は他のカエルにも見られる。いつも水中や木の陰に身を潜めているトノサマガエルが陸上にいたり、普段は水槽の隅で動かないニホンアカガエルがうろうろしたり。食べ残したエサの掃除屋として一緒に入れているドジョウも珍しく姿を見せている。

 5月26日現在、同館は6月2日㊋から開館の予定。松野学芸員は「カエルたちの今の状態を見てほしいですが、お客さんが来るようになるとそうもいかないかと…。そーっと近づき、ほどほどに距離を取りながら観察してもらえれば」と呼びかけている。

写真=カメラを向けると鳴かないウシガエル。鳴くときはのどの辺りを大きくふくらませる

(ニュース和歌山/2020年5月30日更新)