2つの母親グループが活動

 学校給食のパンに地元産の小麦を使ってもらいたいと、和歌山市と岩出市の母親グループが農家の協力を得ながら、無農薬や自然栽培での小麦作りに取り組み始めた。

 2月から活動するのは「給食スマイルプロジェクト~県産小麦そだて隊!」。昨年、関東地区で輸入小麦を配合した給食パンから農薬成分が出たと知り、和歌山市の母親3人が立ち上げた。発起人の満留澄子さんは「地元産の小麦を学校給食で使う道筋をつくり、生産者を増やす。それが地産地消につながる」と力を込める。

 活動する中で、2年前から農薬と化学肥料を使わずに小麦を育てている同市梅原の貴志正幸さんと出会った。貴志さんは「技術が進歩し、収量のある品種が出てきた。昨年は190㌔、今年は300㌔を収穫できました」。11月には6回、同市中野の貴志南小学校で、貴志さんが育てた小麦を試験的に給食用のパンに使用する。

 また、海南市の耕作放棄地を借り、貴志さんに教えてもらいながら、一般参加を募って小麦の栽培を始める。この取り組みは県の農業農村活性化支援モデル事業に選ばれた。県里地・里山振興室は「国が小麦と大豆の国内自給率向上に動く中、食の安定と農家の活性化につながる」と期待する。

 一方、岩出市の母親4人が8月に発足させたのが、「ママの食育コミュニティ make和smile」。岡山県の母親グループが給食にオーガニック食材を使うための署名活動をしていると知ったのがきっかけだ。

 自然農法で黒米や桃などを栽培する紀の川市の片山篤さんと共に、来年夏にかけ、小麦を作る親子イベントを企画。11月1日の第1回には20組71人が集まり、約3000平方㍍の畑に種をまいた。掛田梨絵代表は「今の子どもは農作物がどうやってできて、自分たちの元に届いているか知らない。食育の観点でも意味がある」。

 県学校給食会によると現在、小麦がほとんど栽培されていない和歌山県では、輸入小麦で作ったパンが給食で出されている。一方、近畿では和歌山と大阪をのぞく4府県が一部に地元産の小麦を使っている。同会の滝本修事務局長は「子どもに安全でおいしい食材を届けたい思いは皆同じ。給食の地産地消は生産者を守ることにもなる。こうした動きが広がれば」と話している。

 県産小麦そだて隊は14日㊏と15日㊐午前9時~午後3時、海南市高津の畑で種まきを実施。無料。詳細はフェイスブックかメール(kyusyoku.smileproject@gmail.com)。

写真=給食パンを県産小麦に2つの母親グループが活動

(ニュース和歌山/2020年11月7日更新)