地元のカメラマン 遠山いさおさんが写真集

 名草山と生石山、藤白山系のなだらかな稜線を背景に、アオサギが和歌川で穏やかに憩う写真に添えられたのは、「玉津島 よく見ていませ あおによし 平城なる人の 待ち問はばいかに」──。和歌山市和歌浦東のカメラマン、遠山いさおさん(77)が自身の写真に万葉歌を合わせた『光芒(こうぼう)・和歌の浦』を12月1日に発行した。「近年は開発が進み、いにしえの面影は薄れているが、万葉歌人らの琴線に触れた情景を残したい」と熱を込める。

 和歌浦で育った遠山さんは、日本写真専門学校を卒業後、商業カメラマンとして活躍し、県内の祭りや風景など撮って歩いた。2001年に生石高原の希少植物や自然現象を撮り始め、07年にブログ「生石高原・紀伊の風」を開設した。

 10年からは和歌浦に焦点を当て、毎朝、名草山から現れる日の出を撮り続けている。「冬だとあしべ橋の近く、夏は片男波の先端まで行かないと撮れません。四季の移り変わりを自然に教えられ、生かされていると実感します」

 写真集には、満潮の干潟に映る朝焼けや、小雪が舞い散る三断橋のほか、和歌浦で見られる愛らしいシロチドリやユリカモメなどを掲載。3時間砂浜に寝そべってシャッターチャンスを狙った、砂を蹴り上げて移動するカニのダイナミックな写真には、和歌浦で詠まれた「衣手の ま若の浦の 真砂地 間なく時なし 我が恋ふらくは」を添えた。

 A5判、30㌻。700円。玉津島神社(073・444・0472)。

写真=生き物の営みと水の輝きを表現した

(ニュース和歌山/2020年12月19日更新)