起業スクールは盛況

 

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 政府が掲げる「日本再興戦略」で施策の一つとして挙げられている創業支援。中小企業の活性化を通じ地方再生につなげる目的で、県内でも金融機関から融資を受ける起業家や、創業のノウハウを学ぶスクールの受講者が増加している。活発化する創業支援と起業家の今を追った。

 国が創業を支援する背景には、日本の開業率の低さがある。国内の中小企業はこの10年で約100万社減少し、雇用も縮小。県内でも事業所が1986年の67000ヵ所から2012年には49000ヵ所に、従業員は41万5000人から37万6000人に減った。

 国は開業率を現在の4%台から欧米諸国並みの10%に引き上げようと、13年に「日本再興戦略」を策定。政府系金融機関の融資枠拡大や国からの補助金を増やすなど、資金面に加え、創業スクールを開催し起業を考える人を後押ししている。

 その一つ、日本政策金融公庫和歌山支店によると、今年度上半期の創業融資は99企業で、前年同期比152%と近畿トップを記録。同支店の大曲信之さんは「今年度から無担保融資の条件である創業資金の自己資金比率が5分の1から10分の1に緩和され、申し込みやすくなったのでは」とみる。

 中でも、55歳以上男性(前年同期比275%)をはじめ、30歳未満男性(同200%)、女性(同121%)の増加が著しく、「介護や看護など高齢社会の和歌山で、自分の知識や経験を生かし地域の課題解決に向けた事業を起こす人が増えています。創業支援は、地元の雇用が生み出され地方活性化につながる」と大曲さん。公庫からの融資を受け、昨年4月にリハビリのデイサービスを始めた安原望さんは「勉強会を開いたり、相談にのってくれたりと対応が丁寧で、会社を立ち上げるまでの手続きがスムーズでした」と話す。

 一方、起業を学ぶ講座も盛況だ。和歌山市の岡会計センターは中小企業庁の事業受託で昨年10月~今年1月に創業スクールを実施。公務員や主婦、会社員など22人が参加した。同センターの岡京子さんは「関係者から『創業支援の講座は人集めが大変』と聞いていましたが、予想以上に集まり、みな起業マインドが高かった」と喜ぶ。全15回の講座で、経営理念の描き方や営業計画の立て方などを専門家から学んだほか、ビジネスプランの作成と発表も行い、参加者同士で意見を出し合って、それぞれが考える創業計画に磨きをかけた。

 年内に地域活性化のための仲人サービス事業を立ち上げようと考える受講者の西風秀一さんは「起業から軌道に乗るまでのリアルな話を聞くことができ、起業を目指す他の参加者から多くの刺激をもらいました」。買い物支援の事業設立を考える井上和彦さんは「自分のビジネスプランが客観的に事業として成り立つか見直せた」と笑顔。

 来年度は各自治体でも創業支援計画の策定が進む見込みで、県企業振興課の高橋博之さんは「個人事業主はじめ中小企業が多い和歌山は今後、廃業が増えるとみられる。地元産業の将来を支える創業は重要で、県も積極的に支援してゆきたい」と話している。

写真=創業スクールでは受講者が積極的に意見を交わした

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飲食店開業へ麦の郷が応援 店舗貸し出しや高校生カフェ

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 創業支援の動きは民間にも広がっている。紀の川市粉河の古民家、山崎邸を管理する社会福祉法人、麦の郷は屋敷内に設けたカフェ「創(はじめ)」を活用し、創業を考える人にシェアキッチンとしてカフェを貸し出している。麦の郷の野中康寛さんは「自分で店を持ちたいという人を応援し、地元で店を開いてもらえれば地域活性化につながる」と描いている。

 調理師免許を持つ個人に貸し出す一方、昨年12月から地元で働く楽しさを感じてもらおうと粉河高と連携し、「高校生カフェ~シャル」を不定期に開催。和歌山大学と地元商店主、同高が連携して行う講座、KOKO塾でまちづくりを学ぶ生徒を中心に運営し、メニューや価格設定を自分たちで決め、ケーキやラスクなどを自作している。

 全て手作りにこだわっており、同高2年の西岡七彩(ななせ)さんは「夏には地元特産の桃を使ったスイーツも提供したい。お客さんが色々な意見を出してくれて勉強になります」と笑顔。野中さんは「将来起業するときに、この経験が生きるはず」と見守っている。

 創カフェは木~土の午前11時~午後3時。次回の高校生カフェは2月12日(木)午後4~6時。同店(0736・60・8233)。

(ニュース和歌山2015年1月24日号掲載)