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 根来寺(岩出市根来)に伝わる南北朝時代に描かれた肖像画「絹本著色(けんぽんちゃくしょく)鳥羽天皇像」と個人所有の海上通行証「過所船旗」が国の重要文化財に指定される。3月13日に文部科学大臣へ答申され、数ヵ月後に決定する見込みで、県内の美術工芸品の重要文化財は307件、国指定文化財は447件になる。

 「絹本著色鳥羽天皇像」は縦174㌢、横128㌢で、平安時代後期の鳥羽天皇が座る姿がほぼ等身大に描かれている。根来寺は平安時代後期の僧、覚鑁(かくばん)が高野山に創建した大伝法院が前身。覚鑁に帰依した当時の鳥羽上皇が、大院法院の供養料として荘園を寄進するなど多大な支援を行った。その恩に報いるため、毎年行われていた鳥羽天皇の法要で、肖像画が使われていたとされる。県文化遺産課は「当時どのような役割で使われたか推測でき、肖像画の研究の道を開く可能性がある」と話す。

 「過所船旗」、縦58㌢、横43㌢。瀬戸内海で制海権を持つ能島村上水軍の当主、村上武吉が1581年に出した通行証で、村上氏の家紋「上」の字が記される。受けた雑賀衆の向井弾右衛門尉の名前が、通行証の右側に書かれている。村上氏が発行した通行証は全国で2例。雑賀衆は紀淡海峡から九州までの海上を行き交う海運業を営む集団としての側面もあり、同課は「鉄砲隊など兵力が注目されがちだが、海上で商業活動にも携わっていたことが分かる貴重な資料」とみる。

写真=「絹本著色鳥羽天皇像」

(ニュース和歌山2015年3月21日号掲載)