県外で活躍する和歌山出身の作家とデザイナーがこの春、個展を開催します。紙から飛び出したように見える絵が話題を集める海南市出身の3D作家と、大阪に工房を構え、洋服をつくる和歌山市出身のデザイナーの2人を紹介します。

飛び出す世界表現 3D作家 永井秀幸さん

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 絵の一部が飛び出したように見える3Dアート作品を手がける海南市出身の永井秀幸さん(24、写真)が4月11日(土)〜4月26日(日)、同市大野中のビュッフェファイヴで個展を開く。これまでは都市圏やインターネットを中心に作品を発表しており、地元では初めての作品展。「見た瞬間の驚きを体験して」と意気込む。

 垂直に置いた2冊のスケッチブックに絵を描き、角度と目の錯覚を利用して立体的に見せる手法を編み出した永井さん。2012年にインターネットの動画サイト、ユーチューブで制作工程を公開すると国内外から反響があり、500万回以上再生されている。

 テレビや雑誌で紹介され制作依頼が相次ぎ、キャラクターや企業ともコラボレーション。昨夏に岐阜で開いた個展には約1万人が来場し、現在も4月8日(水)まで大阪のグランフロント北館で展覧会を行っている。

 今回は、個展のために制作した新作10点をはじめ、昨年出版した飛び出す絵本『ふしぎなかいだん』のカラー原画を初公開するほか、代表作『スケッチブック上の住人』など約30点を展示。作品はスマートフォンやデジタルカメラのレンズ越しに眺めると、より立体的に見える。

 現在は大阪に拠点を移し、制作に励む日々だ。「3Dアートは、人通りの多い場所に溶け込ませるなど展示場所を変えるだけでも見方が変わり面白くなる。今後は〝魅せ方〟にも力を入れてみようと考えています」と瞳を輝かせる。

 午前10時〜午後6時(最終日5時)。水曜休み。4月11日と4月12日(日)は永井さんが在廊。同画廊(073・482・1994)。

 また4月29日(水)〜5月6日(水)に、橋本市高野口町名倉の地場産業振興センター「裁ち寄り処」でも作品10点を展示する。

和紙の生地 やわらかに デザイナー 大川真起子さん

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 大阪市に工房「イブーデザインズ」を構える和歌山市出身の女性デザイナー、大川真起子さん(34、写真右〈携帯などは上〉)が故郷で初めての作品展「和紙を纏(まと)う」を4月4日(土)~4月6日(月)、同市元博労町のおのまちあるふぁで開く。直径1㍉と細い和紙の糸を使った生地で仕上げた春夏物の洋服を中心に出品。「特徴的なデザインを入れながらも、着る人のことを何より考慮しています。素材のすばらしさ、着やすさ、快適さに感動してもらえれば」と話している。

 大川さんは市立和歌山商業高校(現、市立和歌山高校)卒業後、服飾専門学校で学んだ。アパレル関係の個人事務所に就職後も型紙の製図に関するスクールに2年半通って腕を磨いた。2006年に女性服ブランドに入社し、国内のほか、ヨーロッパやアメリカなどで商品を展開した。13年に独立し、30歳以上の女性を主なターゲットに、国内の生地、国内での縫製にこだわった商品づくりを行う。

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 和歌山初の作品展に出品するのは、兵庫県西脇市の播州織の職人が和紙の糸と綿の糸で織った生地を使ったもの。和紙の糸は織りの作業中に切れやすいため、使われるのはほとんどが直径2㍉以上で、仕上がった生地は手触りがごわごわしていることが多い。一方、この職人は1㍉の糸を使っており、「ごわつきがなく、それでいて和紙独特の吸湿速乾性に優れている。春夏の気候にマッチした素材」と大川さん。

 会場には洋服、ストールなど16点が並ぶ。「やわらかな生地のたるみや、ゆるやかにふんわりと落ちる素材の良さを引き立たせるために、生地をたっぷり使って立体感を出しています。また、立体的デザインによって、白から現れる影で素材の魅力が映えるよう考慮しました」。綿独特のやわらかな肌触りもあり、普通に洗濯機で洗え、アイロン不要と使い勝手も良い。「洗うほどに、糸に畝が現れ、独特な風合いが出る。素材の変化も楽しめます」と語る。

 正午~午後6時。おのまちあるふぁ(073・498・8156)。

写真=和紙の糸で作った洋服

(ニュース和歌山2015年4月4日号掲載)