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 和歌山市立博物館は図録『赤坂御庭図画帖』を発行した。現在の赤坂御用地(東京)に位置し、江戸時代に徳川御三家の名園のひとつに数えられた「西園」を描いた画帖「赤坂御庭図画帖」を紹介する内容。同館は「今は非公開で、園遊会でのみ入れる場所。絵を通じ江戸時代の名園を巡ってほしい」と話している。

 紀州徳川家の江戸中屋敷・赤坂邸の庭園「西園」は、現在、迎賓館や東宮御所のある赤坂御用地。「赤坂御庭図画帖」は1820年ごろ、藩主の身の回りの世話を担う「御召方坊主」の坂昇春が庭園の様子を15の図に渡って描いており、園内の様子を絵で今に伝える貴重な史料として評価が高まっている。

 うち第四図「青崖埒打毬之図(せいがいらつだきゅうのず)」は、古式馬術である「打毬」に興じる武士の姿が描かれ、スポーツ史の分野から注目を浴びる。第七図「長生村仲夏(ちょうせいむらちゅうか)」は、園遊好きの藩主のために農村を再現した虚構の庭園。籠の野菜、庭にいる鶏などは、すべて作られたもので、江戸期のテーマパークとして見ることもできる。

 図録では、15図をすべて掲載し、関連する随筆や紀行文も合わせて解説をしている。同館の近藤壮学芸員は「研究者からの関心の高まりを受けて発行しました。紀州藩ゆかりの地としてはあまり知られていませんが、和歌山の方に興味を持ってほしい」と望んでいる。

 A4判、32㌻。600円。和歌山市湊本町の同館で発売。同館(073・423・0003)。

写真=完成本を持つ近藤学芸員

(ニュース和歌山2015年4月4日号掲載)