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 大正、昭和、平成と時代を生き抜いた市民の宝物「お城の動物園」が、設置計画の発表から今年で100周年を迎えた。年中無休、無料で開放し、遠足の園児、手をつないで見入る親子、散歩中のお年寄りと、世代を超え愛されている。和歌山市は5月5日(火)のこどもの日を皮切りに、12月まで多彩なイベントで〝100周年イヤー〟を祝う。

 お城の動物園の正式な開園日は不明だが、1915年に発表された「和歌山公園改良計画」に組み込まれ、3年ほどで完成したとみられる。当時、動物園自体が珍しく、全国4番目の開園だった。

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 1970年にリニューアルし、水鳥を中心とした水禽(すいきん)園と、ほ乳類が集まる童話園の形になった。日本庭園をイメージして造られた水禽園は今のようにネットはなく、鳥が脱走する騒ぎも。童話園は童話や昔話の世界をイメージし、東京から招いた画家が壁画を手がけた。タヌキの壁には「カチカチ山」、サルの壁には「サルカニ合戦」が描かれ、子どもたちを喜ばせていた。

 リニューアル直後から43年間、飼育員を務めた竹本俊幸さんは「『昔、お父さんも来たんやで』なんて声が聞こえると、世代を超え身近な動物園として愛されていると感じました」。思い出すのはペンギンが初めて来たときのこと。「連日大人気でした。なかなか卵を産まなかったけれど、今いるのはその子孫たち。かつてはアシカやカンガルー、シマウマなんかもいました」と目を細める。

 入園無料を続ける中、近年は動物園と市民が力を合わせ、園を少しでも支えようとの機運が高まっている。2011年には市民から寄付を募るサポーター制度がスタート。昨年度は17団体、個人119人が登録した。

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 盛り上げに欠かせないのは市民ボランティアグループ「わかやまフレンZOOガイド」の存在だ。わかやまNPOセンターが08年と09年に開いたガイド養成講座をきっかけに結成され、現在は大人15人、小中高生9人。毎年、秋の市民ZOOフェスティバルを筆頭に、イベント企画や動物ガイドを行い、魅力を発信する(写真右〈携帯などでは上〉)

 サルのガイドを担う山一小百合さんは福岡出身。「こんな立派なお城の中にあるなんてとビックリします。大みそか、お正月も開いている。他にはない魅力です。100周年をきっかけに、動物園の価値を見直し、また次の100年に向けて考えてほしい」。

 迎える5日はフレンZOOによるガイドや来園者からのお祝いメッセージ受け付け、ツキノワグマの飼育舎公開、ミニホースのブラッシング体験も。11月には市民ZOOフェスティバルを100周年を祝うメーンイベントとして開く。

 近年は竹燈夜や天守閣でのクラシック演奏会など、お城を舞台にしたイベントや海外からの観光客が増え、昨年度は前年を3万人上回る8万2810人が来園した。

 しかし、城郭内にある動物園は全国で姿を消し、残るは和歌山と姫路、小田原のみ。和歌山城整備企画課の柳雄介さんは「動物園は石垣ぎりぎりまで造られ、そのままのお城の形の中に存在しています。非日常の空間に囲まれたいやしの場として再び訪れてもらえれば」と話している。

写真このページ一番上・大正中期〜昭和初期とみられる動物園/このページ真ん中・1970年にオープンした水禽園(提供=和歌山城整備企画課)

(ニュース和歌山2015年4月25日号掲載)