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 卓球用品専門のアンドロジャパン(神戸市)が昨秋発売したラケット〝和の極(きわみ)〟。品切れ状態が続く注目の商品、製造するのは和歌山市西浜のオーダー家具専門店、山ノ木だ。昨秋、厚生労働省の「現代の名工」に選ばれた和中健さんをチームリーダーに、熟練の職人たちが一本一本手作りする。和中さんは「他社の多くは工場での大量生産。かけた手間では絶対に負けません。長く愛される商品になれば」と思いを込める。

 アンドロジャパンはドイツに本社を置く卓球用品総合ブランド、アンドロが出資する日本法人。山﨑譲治代表が「ラケットを作ってもらえるすご腕の職人はいないか」と探す中、2012年秋に木材会社から紹介されたのが山ノ木だった。「技術はもちろん、材料である木を見る目のプロ」と製作を依頼した。

 創業40年の山ノ木は、家具の注文を受けてから設計、製造する専門店。一級家具技能士5人を抱え、特に家具製作技術責任者の和中さんは07年に中央職業能力開発協会ほか主催の技能グランプリで優勝し、昨年11月には厚労省が卓越した技術者に贈る「現代の名工」表彰を受けている。

 和中さんをリーダーに13年春、開発に取りかかった。試作品はヨーロッパ最高峰のプロ卓球リーグ、ドイツのブンデスリーガで活躍する選手や全日本実業団リーグ1部チーム所属選手らに試し打ちを依頼。丹念に要望を聞き、改良を重ねた。

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 和中さんは「『外径を1㍉大きく』『グリップを0・1㍉細く』という要望は分かりやすい。一方で、『球が跳ねすぎる』など数値で表せないものは難しかったですね」。こういった希望にこたえるため、同じ種類の木ながら産地の異なるものを使ったり、接着剤の塗り方を変えたり。和中輝雄社長は「同じ樹種でも素直な木、やんちゃな木といろいろ。材料一つひとつを職人の目で見極め、削るスピードをわずかに変えることもあります」。家具製作で磨き上げた手先の感覚を生かし、グリップ以外は手作り。微調整を積み重ねること約60回、14年5月に完成した。

 発売したのは高い攻撃力にこだわった「蒼(あお)」と、守備型選手向けの「碧(みどり)」の2種類で、いずれも希望小売価格1万7280円。国内だけでなく、ドイツや台湾でも好評で、10月の発売後、早々に完売した。愛用者からは「今までのラケットよりボールが伸び、球が走る」「球持ちが良い」と好評だ。アンドロジャパンの山﨑代表は「『球持ちが良い』とは、ラケットに球が当たっている時間を長く感じるということ。時間が長いとコントロールしやすいんです」と胸を張る。

 その後も注文は舞い込み続けているが、本業の家具製造が忙しく、加えて職人による手作業のため、生産が追いつかない。1月に予約した人の手元に届くのが7月ごろとなる人気ぶりだ。山﨑代表は「日本トップクラスの家具職人と25年以上の歴史を持つドイツの卓球用品メーカーが知識と経験を持ち合わせ完成させた芸術作品。海外の需要もあるので、さらに売り込み、世界中の卓球愛好家に使ってほしい」。輝雄社長は「使う人のことを考えて作るのは家具もラケットも同じ。ゆくゆくはラケットも選手一人ひとりのオーダーメードで作れれば」と話している。

 商品詳細はアンドロジャパンHP。

写真 このページ上から=一本一本に魂を込める、攻撃型の“蒼”と守備型の“碧”の2種類がある

(ニュース和歌山2015年5月16日号掲載)