2015102410_nakagawaseiko

 貴志川線への思い、いつまでも――。貴志川線の未来を〝つくる〟会メンバーで、4月にすい臓がんで亡くなった中川隆人さん(享年71歳、写真下)の遺作写真展が10月15日、和歌山電鉄の電車内で始まった。妻の聖子さん(71)は「愛情を込めて大事に撮ったものばかり。撮影日に整理しないと気が済まない性格で、深夜まで作業することもしばしばでした。電鉄の力になり、本人も喜んでいるはず」と目を細める。

 

2015102410_nakagawa

 田中口駅に近い和歌山市木広町で生まれ育った中川さんは、高校時代にカメラを購入。以来、鉄道写真一筋で、全国各地のローカル線を撮って回った。定年後は貴志川線の存続運動に積極的にかかわり、2009年から同会の幹事として広報と記録写真を担当した。

 遺作展は中川さんの功績を伝えようと〝つくる〟会が、聖子さんに提案した。和歌山電鉄開業の06年以降に撮影した7000枚の写真と、撮影日の記録、新聞の切り抜き、特別切符などを同社に寄贈することになり、その中から選んだ86枚を展示した。

 水田や花畑の中を走るいちご電車、車内で行われたクリスマスイベントや沿線の催しなどをとらえた作品が車内を彩る。聖子さんは「家族みんなで撮影旅行によく出かけました。貴志川線の存続が決まってからは地元を中心に撮り、朝出たら夕方までシャッターを切っていました」。同会の濵口晃夫代表は「地元の人や会員も知らないような撮影スポットから、一番良い季節や時間帯に撮られており、様々な表情の貴志川線が見られます」と作品を見つめる。

 写真と資料は10月31日(土)に伊太祈曽駅と伊太祁曽神社で開かれる貴志川線祭りで展示し、同線100周年と同社10周年を祝う来年のイベントでも活用する予定。同社の礒野省吾専務は「いつも写真を見せに来てくれ、今思うと、このために撮りためていてくれたのかも知れません。貴志川線がある限り、中川さんも生き続けます」と語る。

 11月13日(金)まで。時刻表は同社HPで。同社(073・478・0110)。

写真=車内での展示を見守る妻の聖子さん
        ◇   ◇
 貴志川線祭り…貴志川線開業100周年記念の電車デザイン発表やステージ発表のほか、ミニトレイン、たま駅長の巨大エア遊具、食べ物、特産品の販売がある。運転台に入っての運転士体験や電車との綱引きも。午前10時半~午後3時。

(ニュース和歌山2015年10月24日号掲載)