最新技術を駆使して開発した補装具を使い、身体障害者が競技に挑む「世界サイバスロン大会」が8日(土)、スイスで初めて開かれる。この大会の電動車イスレース部門に、和歌山大学システム工学部の中嶋秀朗教授率いるチームが出場する。中嶋教授は「ミスなく力を出し切って結果を残し、実用化を目指していきたい」と目を輝かせる。

 サイバスロン大会はスイス国立コンピテンスセンター・ロボティクス研究所が主催。身体を補助するパワードスーツや義手、義足など6部門あり、日本からは和大を含め3チームが参加する。競技者の能力と共に、使用する補装具の技術力が勝敗を左右する。

 電動車イスレースには11ヵ国の企業、大学チームが挑む。中嶋教授らが昨年7月に開発した電動車イス「P─WA」は、アルミ製で80㌔。4つの車輪が独立して動き、座席を水平に保ったまま、坂道や階段に対応する。

電動車いす 本番では、車イスランナーで2008年北京パラリンピック金メダリストの伊藤智也さんが出場する。コース上に設けられた階段やドアなど6つの課題を8分間でできるだけ多くクリアする。伊藤さんは「座席が平行なのはとても安心感がある。一般的な車イスと違い、人の知恵、テクノロジーと一体化するもの。システムエラーを乗り越え、もっとよくなっていけば」と意気込む。

 開発メンバーでスイスに赴く岸村直輝さん(4年)は「本番はちょっとした不具合を見つけられるかが勝負」と緊張の面持ち。中嶋教授は「P─WAは日常生活を想定して大型化を抑え、小回りがきくようにしている。障害者だけでなく、高齢者ら移動支援が必要な人の新しい乗り物になる可能性がある」と描いている。

(ニュース和歌山2016年10月1日号掲載)