外国からの観光客が増え続ける中、自然や食、文化など和歌山ならではの特色を生かそうと、県がみかん狩りや時代衣装試着といった体験型観光のPRに力を入れている。12日には観光案内所や宿泊施設、体験を実施する事業者を対象に外国人向け体験に特化したセミナーを初めて開き、受け入れ対策を指導した。県観光交流課は「都市部とは異なる地元の魅力をアピールし、誘致を進めたい」と意気込んでいる。

 政府が中国や東南アジア諸国のビザ要件を緩和し、行政も海外プロモーションを強化したことで、訪日観光客は年々増加。県内宿泊者も2011年の8万人が15年には43万人と5倍以上となった。以前は中国本土を中心に団体客が目立ったが、近年は、個人旅行が多く、観光庁の調査で、香港からの個人旅行者は5年前の66%から今年は88%、台湾も56%が67%へと大幅に増加した。

 県は以前から、ほんまもん体験としてダイビングやカヌー、ぶどう狩り、語り部との熊野古道散策と数多く用意してきた。外国人に取り組んでもらえるよう、ここ3、4年で観光ガイドブックや果物狩り地図、情報サイトの多言語化を進める。

体験型観光 セミナーでは、マーケティング法やインターネットを利用した誘客法、また、受け入れ時の不安を減らしてもらうため、多言語対応の通訳、翻訳サービスを紹介した。

 体験メニューも増える。和歌山城では和歌山市が殿や姫、侍の衣装体験を9月から週末に実施。外国人はまだ1、2割だが、中には着物を着るために来る人もおり、今後、サービスを充実させる。マリーナシティでは、黒潮市場が今年からにぎり寿司体験を始め、「外国人は体験好きが多く、今後は団体客も含め、対応する」方針だ。

 体験に取り組む外国人に関し、イチゴ狩りを行うかつらぎのむらた農園では、数年前の20~30人が今年は150~200人だった。同課は「『外国人が増えた』と事業者から聞きます。ただ、公共交通機関で行きにくいところが多く、レンタカーで回る個人旅行対策が課題」と考えている。

(2016年10月26日号掲載)