201610801_wakamusha 中高大生の留学を応援する学生団体「和歌武者─WAKAMUSHA」が9月に立ち上がった。メンバーは留学や海外でのボランティア活動の経験豊かな10代後半から20代前半の5人。世界で学んだ経験を和歌山に持ち帰り、地元に貢献できる人材を増やすのが目的だ。代表を務める和歌山工業高等専門学校の嶋田仁さん(20)は「和歌山は留学に関心がある学生が少ない状況。自分たちより若い世代に魅力を伝えたい」と訴える。

 政府は東京オリンピックが開かれる2020年までに約18万人の高校生、大学生を留学へ送り出す目標を立てている。意欲ある学生を海外で学ばせ、グローバルな知識を持った人材を育てようと、文部科学省が13年に留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を始め、14年からは賛同する企業や個人の寄付金を奨学金に充てる官民協働海外留学支援制度を創設し、後押しする。

 和歌武者は、この制度を利用しアメリカとインドネシアに行った2人のほか、南ヨーロッパのマルタ、ミャンマーに行った2人とカナダに留学する嶋田代表が集結した。

 帰国後、身につけた能力を生かす職場環境や、留学を希望する学生の少なさを感じ、推進を図ろうと団体を立ち上げた。和高専のメンバーは、学内でも自身の経験を語る団体を発足させ、学生の相談に応じる。

 メンバーの一人でワシントン大学に通うかたわら、不動産会社でのインターンを経験した和歌山大学観光学部の西上怜歩さん(22)は「漠然とした語学留学ではなく、目的を持った留学が大事。休学しなくても留学できる方法はある。卒業や就職が遅れると二の足を踏む人が多い」と語る。

 海外での就労を決めたメンバーもいる。県立医科大学保健看護学部の樋口亜美さん(23)はミャンマーの貧しい子どもを支援するNGOの副代表を務め、現地と日本の往復を繰り返し、来年からアフリカで働く。201610801_higuchi

 国内全体で見ると、留学者数は1980年代後半から上昇し、2004年の8万3000人をピークに減少を続ける。相談を受け付ける県国際交流センターの城山雅宏さんは「留学相談は少しずつ減っており、最近は月1、2人ほど。正規の留学より、語学を目的とした短期留学が多い印象」と話す。

 9月24日の発足会ではメンバーそれぞれが留学の経緯や経験を力説した後、「海外で学んだ学生の強み、弱み」をテーマに参加者が意見交換した。「日本をきゅうくつに感じて戻らない人が増えるのでは」「留学至上主義にならないか」などの声が上がった。

 参加した和大観光学部1年の東詩歩さんは「これからのビジネスを考え、アジア圏への留学を考えています。周りでは英語習得を目的に希望する人が多いので、色んな体験談を聞けて参考になりました」と笑顔。

 和歌武者は今後、隔月でゲストを招いた講演会や親子向けに費用や制度などを話す説明会を行う。海底に眠る天然ガスの研究を進め、来年3ヵ月間、カナダに留学する嶋田代表は「留学は目的でなく手段。和歌山から武者修行に出て帰ってくる〝和歌武者〟と、活躍できる環境を育てたい」と意気込んでいる。

 中学生以上を対象にした説明会を11月19日(土)に開く。詳細は和歌武者フェイスブック。

(ニュース和歌山2016年10月8日号)