脳みそが飛び出したゾンビ、歯がむき出しになった死に神、ホラー映画『チャッキー』を思わせる傷跡と血まみれの顔…。和歌山市西庄の井上智草さん(32)が顔や身体に直接描くアートが話題を呼んでいる。井上さんは「仮面を付けるのではなく、表情も一緒に変わるのが面白さ。日常からの〝変身〟です」と瞳を輝かせる。

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 写真スタジオで働いていた時、妊娠中の女性が記念に撮影するマタニティフォトをたびたび目にした。大きなおなかに「何か描いたらかわいいかも」とひらめき、妊婦のおなかに絵を施す「ベリーペイント」を始め、これまで50人のおなかを彩った。

 傷跡や妊娠線と、身体に悩む女性が笑顔になる姿にやりがいを感じたが、なかなか実際の妊婦に描く機会はない。そこで、練習しようと自分の顔や手に試し描きするうち、いつの間にか夢中になった。ヒョウ柄や傷跡など、思いつくまま5ヵ月間、毎日鏡に向かった。

2016108_faceart.2 昨年5月、「ラグーンアートメイク」を屋号にアーティスト活動を開始。美容院や老人ホーム、学校から依頼が舞い込み、出張メークを行うようになった。専用の水性絵の具でブラシと絵筆を使い、1時間半ほどかけて丁寧に描く。衣装やカツラ、コンタクトレンズにも気を使う。

 着物の柄を身体に施す和柄のボディアートにも取り組むほか、3年前から祖父に油彩画を教わり、今年は自分の唇を描いた作品が和歌山市展洋画部門の特選第4席に選ばれた。向かうキャンバスはまさに自由自在だ。

 まもなくハロウィンシーズンに突入。井上さんは「紙、顔、身体、どれも違った描く楽しさがあります。これからフェイスアートをもっと広め、結婚式や誕生日パーティーのサプライズに取り入れてもらえたら」と望む。

 作品はブログ「LagoonArtmake」で閲覧可。

(ニュース和歌山2016年10月8日号)