11月5日は「世界津波の日」。今月は例年に増して熱心に防災訓練を行う地域が増えている。和歌山市の西山東地区では6日、避難時の要支援者を中学生がサポートする訓練を初めて実施。海南市の黒江・船尾地区では13日、自治会や小学校などが共催した。

避難する高齢者サポート〜和歌山市西山東地区

2019111902_bousai1 災害時に自力で避難が難しい要援護者と、助けに向かう支援者の登録を進める西山東地区防災会。婦人会や民生委員会などと連携し、助け合いの仕組みづくりを進めるほか、今夏は和歌山市吉礼の山東小学校5年生と共に地域の防災マップを作成した。

 11月6日、小中学生を中心に、同小で開いた「ふれあい・ぼうさい祭り」。家族で防災について考える機会をと、消防団や自治会関係者を中心に内容を見直した。

 熊本地震では、地震による直接死50人に対し、災害後の関連死が60人に上っていることを受け、要援護者の避難所での支援に注目。当日は、地域の大人たちに連れ出された要援護者を中学生が小学校まで誘導し、防災紙芝居や消火体験コーナーなどを一緒に回った。

 車いすで避難した吉田匡吉さん(90)は「中学生がそばにいてくれて安心できました。子どもに恵まれなかったので、夢のような1日でした」とにっこり。東中学校2年の西端崚磨(りょうま)さんは「車いすだと坂道が通りにくく、どの道順で行くのかを事前に考えておかなければいけないと感じた」と気持ちを新たにしていた。

 地区防災会要援護者対策部長の川上清彦さん(73)は「東日本大震災で中学生が率先して避難し助かった例がある。子どもたちが取り組みに加わることで地域の大人の防災意識も高まれば」と期待していた。

逃げる際の誘導役担う〜海南市黒江・船尾地区

  海抜の低い場所が多い海南市の黒江・船尾地区で、同市と地元自治会、黒江小学校などが開く津波避難訓練は今回が5回目。小学生は例年、学校から一斉に避難するが、今年は自宅にいる時に地震が起きたと想定し、家族と共に各地区の避難場所を目指した。同小の木下昌久校長は「6年生が避難ルートの説明を担当し、より実践的な訓練ができた」と目を細める。

 埋め立て地が多い同市中心部のうち、同2016111902_bousai2小付近で最も低い場所は海抜70㌢。津波からの避難に住民の関心は高く、同小も学期ごとの避難訓練に加え、地震時に姿勢を低くし、頭を守る訓練を行っている。

 13日は、地震後に大津波が来るとの想定で、住民5100人を対象に実施。6年生が町中に立ち、家屋倒壊で通行止めとなった地域を立ち入り禁止として別の道から避難場所へ向かうよう誘導するなど、役割を分担した。

 海抜18㍍の浄国寺は避難場所の1つ。家族と逃げた4年生の上田恭大(きょうた)くん、中村拓生(たくみ)くんは「いつも訓練をしているので、すぐ上がって来られました」。避難者を誘導した6年の東浦颯大(そうた)くんは、上る途中で「疲れた」と立ち止まったお年寄りに「ゆっくりで良いですよ」と声をかけ、安心させていた。

 境内に何人避難できるかを考えていた黒牛自治会の中山佳子さん(51)は「寺に上るのも大変なお年寄りが大勢います。2次避難場所の室山保育所へは尾根づたいに行きますが、その支援が難しい」と心配していた。

(ニュース和歌山2016年11月19日号)