紀の川市の指定無形民俗文化財で大國主神社(同市貴志川町国主)の伝統行事、大飯盛物祭(おいもりものまつり)が4月、11年ぶりに行われた。この祭を題材にした紙芝居を貴志川高校図書部が作成し、県立図書館の「手づくり紙芝居コンクール」で最上位の優秀賞に選ばれた。上辻南帆部長(3年)は「祭の準備段階から取材を重ねたかいがありました。小学校や地域のイベントで披露し、祭を伝えてゆきたい」と喜んでいる。

kishigawakoukou 約700年前、貴志川に現れる龍蛇(りゅうじゃ)に食べ物を供えたのが始まりと伝わる祭。約6000個の餅をはり付けた高さ5㍍、直径3㍍の巨大な熱気球型の山車が街を練り歩く全国でも珍しい奇祭で、11年ごとに開かれている。

 同部は2007年から、貴志川線や地元の伝承をもとに紙芝居を作成し、地域の小学校などで読み聞かせを続けている。コンクールは毎年エントリーし、今年は祭をテーマにした。

 部員たちは祭の準備から取材を重ねた。竹を切り出し、組み上げる作業は絵を添えてサイズや分量も書き留めた。「祭を守ろうという地域の人の熱意が伝わってきました。その多くが高齢者で、正確に伝えられるよう、記録に力が入りました」と2年の出口穂花さん。

 作品は、少年に祖父が祭の歴史を教え、準備から当日までの様子を追う物語で、26枚の絵にまとめた。特に祭の場面を演じる際は、現地で録音した行列の人々が歌う『盛物歌』を再生し、臨場感を出す。最後は「祭をつくるのは人の力。祭は人をつなぎ、地域に力をくれます。次世代につないでいくことを願います」と締めくくる。

 福元輝子貴志川高校図書館長は「地域に根ざした作品で、当日の高揚感が伝わってきます。生徒たちには、住民のつながりが広がる過程を学ぶ機会になりました」と目を細めていた。

(ニュース和歌山2016年11月26日号掲載)