県立図書館、LURUホール  小規模演奏の企画好評

mediahall クラシック音楽の生演奏に気軽にふれられる会場主催のミニコンサートが好評だ。演奏家にとっては集客や運営の手間をかけず腕を磨く場になり、観客はクラシックを気負わず楽しめるとして、歓迎の声が上がっている。中でも和歌山市西高松の県立図書館ではエントランスでの演奏会が人気で、同市狐島のLURUホールはカフェ形式のコンサートを10月に始めた。

 地元の演奏家に発表の機会を提供し、クラシック音楽の文化を育もうと、県立図書館が3年前から月1回開くエントランスコンサートは、毎回80人以上を集める人気だ。無料ながら質の高さにこだわり、出演者は有料での公演経験や伴奏経験者に限定して公募。一流メーカー、スタインウェイのピアノを使用し、プログラム作成にも力を入れる。

 毎回コンサートに訪れる同市の持丸房子さんは「演奏だけでなく曲や楽器の話も聞けるのが楽しみ。予約がいらず立ち寄れるのも魅力です」。同館の谷口義彦文化情報センター長は「回を追うごとに子ども連れの姿が増え、ホールのような閉じた空間では楽しめない層に受け入れられた」と目を細める。

 和歌山大学と協定を結んだ昨年からは、教育学部の学生も出演。指導する山名敏之教授は「人前で演奏することで技術が深まり励みにもなる。緊張感を高め、腕試しができる」と歓迎する。

 一方、今年3月にオープンしたLURUホールは約100平方㍍と小規模ながら、本格的な音響空間にこだわった。ドイツ製スピーカーを採用し、壁面の反響板に紀州杉を使い、音を柔らかく響かせる。

 10月から毎月第3土曜の昼下がりに始めた試みが「LURUクラシックカフェ」だ。代表の岩橋和廣さんは「会場手配、集客、運営を会場側が引き受けることで演奏者の手間を少しでも軽減させられれば」と力を込める。

 少しの物音も嫌うクラシックファンは多いが、あえてドリンクを提供し、くつろいだ気分で楽しめるようにした。チケット代は1500円で毎回4組が出演。1組30分と短く、定番曲や耳なじみのある曲を交え、飽きさせない工夫を凝らす。

 第1回に出演したピアニストの瀧本裕子さんは、9月にドイツ留学を終え、和歌山に戻ったばかり。「クラシックカフェに出たことで名前を知ってもらえ、その後の自主公演に来てくれた方もいました。こういった場があると演奏者も聴き手も育つはず」と喜ぶ。

 同市の公共の中小規模ホールは県民文化会館や和歌山市民会館などで、いずれも300〜650人規模。同市のピアニストで同志社女子大学嘱託講師の千田和美さんは「多目的ホールばかりで、音のよい公共の音楽専用ホールはゼロといった現状。まずはクラシックの聴き手を増やしていくことが必要」と指摘する。

 まちなかを会場にしたクラシックプロムナードや和歌山城での演奏会など、クラシックに親しむイベントを2007年から企画する文化創造グループの花光郁(たかし)代表は「すそ野が広がってきたのはよい傾向だが、今後はお金を払う本格的な公演へ足を運んでもらうようつなげるのが課題」とみている。

(ニュース和歌山2016年11月26日号)