県 特区ガイドに3ヵ国語追加 観光客増へおもてなし強化

 日本を訪れる外国人が右肩上がりの中、和歌山県は観光をサポートする通訳案内士(ガイド)増に力を入れている。通訳案内士は国家資格だが、2013年に高野・熊野が英語の通訳案内士特区となり、県の研修と口述試験をパスすれば有償で活動できる。来年から無資格でも有償ガイドが可能になるのを控え、県は今年、研修にフランス語、スペイン語、中国語を追加。多言語対応できる体制を整え、観光客増につなげたい考えだ。

 東京オリンピックが開かれる20年に外国人訪日客4000万人を掲げ、政府が入国ビザ緩和など対策を進める中、和歌山を訪れる観光客も増え続ける。県内に宿泊する外国人は11年の8万人から昨年は50万人を超えた。

 中でも、高野山がフランスの観光ガイドブック・ミシュランに掲載され、熊野古道がスペインの姉妹道サンティアゴ巡礼道と共同イベントを始めたことで、それぞれ人気が出た。高野町に宿泊したフランス人は、11年に2200人だったのに対し、昨年は1万3900人。また、古道を歩く人にガイドや宿泊施設を仲介する田辺市熊野ツーリズムビューローを通し宿泊したスペイン人は14年の240人が昨年は400人となった。

 外国人に対するおもてなし強化策として、政府は通訳ガイドの増加を掲げる。その一つが12年に始めた特区ガイド。和歌山は高野町や田辺市、那智勝浦町など8市町が対象で、英語のみながら既に146人が認定され、県内に76人いる国家資格者の倍になった。

 高野山では、国家資格の通訳ガイドら20人でつくる高野山異文化交流ネットワーク(KCCN)が主になり外国人に対応。今年から平日に限り、特区ガイド8人が奥の院や金剛峯寺など限定された場所で案内する。

 熊野古道では、国家資格者7人、特区ガイド21人が活動。トレッキング人気の高まりで山歩きのポイントや植物を説明することが多く、地域に精通するガイドの活躍の場が広がりを見せる。

 県は今年、フランス人、スペイン人らの増加対策で、特区ガイド研修に中国語を含む3ヵ国語を加えた。受講者はフランス語4人、スペイン語5人、中国語12人。フランス語特区ガイドを目指す𠮷村知佐子さんは「日本の風習を細やかにアドバイスし、旅がスムーズに行くよう手助けを」。同じくスペイン語の野端溶子さんは「熊野古道散策をはじめ、着地型観光と言われる地元体験を案内したい」と意気込む。

 これまでは高野・熊野ともほぼ英語で対応してきた。ツーリズムビューローの坪井伸仁さんは「観光案内所にはスペイン語しか分からない人も来ます。スペイン語ガイドが加わるなら、PRすれば希望者があるのでは」。KCCNの松山典子代表は「フランス語のHPがありますが、問い合わせは年1、2件。ただ、ニーズが多くなってからガイドを養成しても遅い」とみる。

 来年から認められる無資格ガイドとの差別化もあり、特区ガイド研修を充実させた県観光交流課は「英語圏以外の人を母国語で案内できれば、ストレスなく和歌山を満喫してもらえる。それがおもてなし」と話す。今後は、潜在需要の掘り起こしと、ガイドとの結びつけが課題となる。

写真=熊野古道で外国人を通訳ガイド(右端)が案内

(ニュース和歌山/2017年10月14日更新)