和大生 生石高原でカヤ刈り

 日本の伝統建築の技として昨年、ユネスコ無形文化遺産に認定されたかやぶき屋根。材料のススキがある生石高原を持続可能な採取場として復活させるプロジェクトに和歌山大学生17人が取り組んでいる。3年の永田理紗さんは「生石のススキを使って、かつてかやぶき集落があったかつらぎ町志賀地区の屋根をふき替えるのが目標です」と意気込んでいる。

 活動するのは地域の過疎化対策を考える和大地域協働演習ゼミの学生。各地域の特色を学ぶ中、志賀地区のかやぶき集落を知った。しかし、昭和30年代以降、徐々にふき替えない家が増え、現在は24軒全てがトタン屋根。断熱や吸音性に優れ、かやぶきを望む人は多いが、住民が高齢化し、工事の担い手が少なく、材料が高騰しているため、実現に至っていない。

 一方、ススキの絶景スポットで人気の生石高原は、平安時代からカヤが採れる場所だったが、かやぶき屋根の減少と共にススキの維持が難しくなり、群生が減退の一途をたどっている。こちらも管理するボランティアの高齢化により、人手不足が進む。

 この2つの問題を解決しようと、〝地元の屋根は地元の素材でふく〟を目標に和大生たちが活動を開始。まず試作として2019年12月、竪穴式かやぶき茶室造りを始めた。日本茅葺き文化協会の豊原弘恵理事と職人に教わり、材料となるカヤを生石高原で3度刈った。建物の骨組みに使う竹、カヤをまとめるわらのひもも地元産にこだわって伝統手法を学び、昨年末、志賀地区に完成させた。豊原理事は「本来、ふき替え工事は地域の
〝結〟と呼ばれる仲間で行ってきた。材料の確保と共に技術を多くの人に伝承することが必要です」。

 次は、志賀地区にある古民家の小屋をかやぶき屋根にする計画。永田さんは「質の良いカヤを採るにはススキの手入れが必要で、それが生石高原の景観維持にもつながる。カヤの使い道があってこそ続けられる活動です。周囲の方の理解や協力を得ながら絆を深められれば」と望んでいる。

 生石高原カヤ刈り体験を2月20日㊏、21日㊐、28日㊐午前9時~午後4時に実施する。無料。各回50人。希望者は同ゼミ(shikouan.04@gmail.com)。イベント費用のため、クラウドファンディング「モーションギャラリー・かやぶきプロジェクト」を実施中。

写真=生石高原のススキ維持も目指す和大生たち

(ニュース和歌山/2021年2月20日更新)