花粉症シーズン真っただ中。近年、症状を緩和させる効果があると注目を集めているのが、北山村原産のじゃばらだ。和歌山市三葛のファイブワンはこのかんきつを使った加工品の企画、販売に力を入れており、和歌山県内事業所とコラボしての商品開発も積極的に進める。坂本正博社長は「北山村以外の県内農家はブランド力がなく、販売に苦労している。じゃばらを県全体の特産品にするのが私の夢です」と意気込んでいる。

和歌山市のファイブワン 付加価値UPで農家の収入増へ

 北山村で発見されたじゃばらは、花粉症の症状を和らげるとされるナリルチンを豊富に含む。その量はカボスの13倍、ゆずの7倍と言われ、特に果皮に多い。2018年の県内生産量は129㌧で、うち北山村は86㌧、北山村以外は43㌧。

  坂本社長は51歳だった2004年、役員を務めていた県内企業を退職し、ファイブワンを立ち上げた。ガーデニング用品やペット用品の卸、通販からスタートし、事業展開する中、「北山村以外で作られたじゃばらはなかなか売れない」との話を小耳にはさんだ。

 14年、広川町の農家からじゃばらを仕入れ、あめと入浴剤を企画し、商品化した。17年には販促活動を行う中で出会った静岡のサプリメント製造会社とカプセル入りの果皮粉末を発売した。

 2年前からは、県内事業所とのコラボを進める。まず、紀の川市の観音山フルーツガーデンと果皮がたっぷり入ったマーマレードを商品化。昨年はジュース製造を手掛ける和歌山市の松尾とストレート果汁、有田市の老舗醤油メーカー、則岡醤油醸造元とじゃばらぽん酢、今年に入り、海南市の青木ファーム&デリとドライフルーツと、相次いで出した。観音山フルーツガーデンの栗本祐里さんは「じゃばらは生のままだと苦みがある。マーマレードにすることで、気軽に味わってもらえれば」と笑顔を見せる。

 商品開発と並行し、じゃばらの付加価値を上げるため、大阪市立大学と効能について共同研究を行ってきた。花粉症患者が果皮粉末を毎日300㍉グラム摂取したところ、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状が緩和されることが確認された。

 昨年末には、じゃばらの認知度アップに向け、東京にある戸板女子短大との取り組みを始めた。料理を研究する同好会の学生にじゃばらを使ったレシピを考案してもらい、今後、動画で発信するほか、休暇村紀州加太で提供する計画だ。

 ファイブワンが仕入れる農家は、紀美野町、かつらぎ町、有田市などの10軒あまり。このうち約20年前から栽培する海南市の楠瀬忠彦さんは「味にクセがあるので、自分たちで売り方を考えないといけないと思っていたところ、5年ほど前に坂本さんと知り合った。加工品用に高く引き取ってくれるおかげで、大阪の市場での買い取り価格も上がりました」。現在、楠瀬さんの畑には約100本あり、近々、30本増やす予定にしている。

 坂本社長によると、商品を対面販売した際、「肌感覚ですが、じゃばらを知っているのは関西で10~20%、関東はゼロに近い」と話す。さらに「認知度と付加価値を高めることが農家の収入を安定させ、耕作放棄地減につながる。じゃばらを県全体の特産品に育て、農業活性化に貢献してゆきたい」と張り切っている。

 ファイブワンの商品は和歌山市民図書館1階、花山温泉のほか、「じゃばら本舗」HPで販売。

写真=あめにマーマレード、七味唐辛子、茶、ドライフルーツなど多彩な商品の人気は上々

(ニュース和歌山/2021年3月13日更新)