看護師の田中匡子さん 手話バッジ作成
手話や筆談ができることを聴覚障害のある人に伝える「手話バッジ」を、和歌山市の看護師、田中匡子さんが考案し、普及を図っている。昨年夏に販売を始め、これまで400個が売れた。「サポートが必要な時に聴覚障害者が声をかける目印になる。助けになりたい、寄り添いたいとの思いを伝えるバッジです」とほほ笑む。
聴覚障害のある患者から「おはよう」「薬」などの手話を教わり、心が通い合うのを感じた田中さん。別の患者にも手話で話しかけると、最初は硬かった表情が和らいでいった。もっとコミュニケーションを図れるよう手話教室へ通い始め、昨年1月には仲間と手話サークルを立ち上げた。
バッジを思いついたのはその2ヵ月後。電車トラブルに遭い、車内放送を頼りに乗り換える際、「聴覚障害のある人は、何が起こったか分からず困るのでは」と考えた。
デザインは「手話」を意味する手の絵、手話の文字と初心者マーク、「筆談OK」の文字の3種類。製作を手伝う藤本佐知子さんは「聴覚障害は見た目で分かりづらい。マスクで口元や表情が見えず、読話がしにくくなる中、多くの人が障害や手話に関心を持つきっかけになれば」と願う。
7月、飲食店や保育園などで委託販売を始めた。その一つ、和歌山市のめでたいやき本舗、貴志範彦オーナーは「『筆談OK』のバッジを見て、筆談で注文されたお客様がとても喜び、度々来てくれるようになりました。接客業へ認知されれば、障害を持つ人は安心して買い物や食事ができ、店にとっても良い効果になる」と熱を込める。
紀南はじめ、大阪や神奈川、大分にも広がっている。収益の一部は県内唯一の聴覚障害者向け老人ホームへ寄付した。田中さんは「今秋には全国障害者芸術・文化祭わかやま大会があり、全国から集まった障害のある方へのおもてなしになる。地道にバッジを広めたい」と話している。
和歌山市の日進月歩、岩出市の手話カフェwith youなど13ヵ所で販売。大400円、小300円。郵送希望者は田中さん(yuzu.ten4381@gmail.com)。
写真=「輪を広めたい」と田中さん(左)と藤本さん
(ニュース和歌山/2021年3月13日更新)