全国各地で放置された竹林が問題になる中、和歌山市の市民グループ、わかやまインフィニティが食べることで解決を図ろうと取り組んでいる。5年前からモウソウチクを使った紀州産の塩漬けメンマ作りに挑戦しており、今年はマダケでの製造も始める。代表の橋本光代さんは「食材へ変えることで、竹の可能性は無限(インフィニティ)に広がる。持続的な収益モデルを作るのが目的です」と意欲を見せる。

わかやまインフィニティ 塩漬けメンマ 紀州の名産に

 かつて生活の必需品だった竹。プラスチック製品が増えた昭和40年代以降、竹林が管理されなくなり、農地や里山へ侵食する竹害が西日本を中心に増加し、問題になっている。主催するわかやま森づくり塾で竹林整備に取り組む県森林インストラクター会の岡田和久会長は「山東地区のようなタケノコの産地は管理されているが、高齢化で放置される場所が多く、県内では北部に目立つ。竹害が進むと里山の雑木を枯らし、生物の多様性がなくなる」と憂慮する。

 この状況を食べることで何とかしようと立ち上がったのが、同市の有志6人。5年前に竹林整備を始め、翌年からは同市金谷にある約1000平方㍍の竹林を拠点とし、月1、2回、竹の伐採作業に汗を流している。

「塩漬けなので長期保存できます」と橋本さん(前列左)

 そんな中、竹でメンマを作れると知った。国内で流通するメンマの約90%が中国産で、国産はわずか。持続的な活動には収益化が課題だったため、モウソウチクでメンマを作る福岡県の会社を視察し、試作に着手した。

 高さ1・5〜2・0㍍のやわらかい幼竹の皮をむいて湯がき、1ヵ月ほど塩漬けする。初年度は発酵しすぎて失敗、2年目は形になったものの、販売には至らなかった。3年目の2019年、わかやまインフィニティを組織し、ようやく“紀州竹菜”の商品化にこぎつけ、約100㌔を販売した。現在、メンバーは16人で、この一人、造園業を営む井沼重人さんは「成長した竹の伐採は重労働で、費用対効果は良くないが、幼竹なら簡単に切れ、竹林維持に最適。食の安全につながるほか、和歌山ラーメンとのコラボもあり得る」。

 食材に採用した同市雑賀崎のレストラン、日進月歩はピザやスイーツにして提供したところ好評。道脇勇気オーナーは「想像と違い、タケノコに近いシャキシャキした歯ざわり。塩漬けなので料理へ応用しやすい」とお墨付きを与える。

 昨年6月、和歌山での純国産メンマサミットで発表し、弾みをつける考えだったが、新型コロナウイルスの影響で中止に。感染が広がる中、メンマ作りは中断したものの、マダケでの試作を続け、手応えを得た。橋本さんは「周辺にはマダケの竹林も多い。ニガタケとも言われるマダケが食用になると分かれば、地元の人も各家庭で漬けるようになるかもしれない」と期待する。

 今月、メンマ作りを再開。品質向上を図りながら製造量を増やすほか、6月にはマダケでも仕込む。将来的には竹林所有者の協力を得て、トン単位で加工する計画だ。橋本さんは「収益が上がれば雇用が生まれ、竹に埋もれていた場所が、幼竹の採取場に変わります。レシピも含めて普及を進め、和歌山を代表する製品へ成長させたい」と話している。

 詳細は同グループHPフェイスブック

(ニュース和歌山/2021年5月8日更新)