〝高校文化部のインターハイ〟とされる全国高校総合文化祭「紀の国わかやま総文」が7月31日㊏~8月6日㊎、県内各地で開かれる。演劇、囲碁、吹奏楽など22部門で全国の高校生による、若さあふれるパフォーマンスや作品を楽しめる。このうち、3部門に挑む県内高校生にスポットを当てる。

 

伝統芸の心 息合わせ 吟詠剣詩舞部門 向陽・星林合同チーム

 漢詩や和歌の情景を独特の節で表現する吟詠と、これに合わせて踊る剣詩舞を組み合わせた日本の伝統芸能「吟詠剣詩舞」。出場23チーム中、向陽高校2年2人と星林高校2年1人による合同チームが大トリを務める。

 4年前、地元開催の総文に向け、榎本幸音(さちね)さんや大浦芽奈(めな)さんら向陽中学の生徒でチームを結成。その後、メンバー変更を経て、幼少期から詩吟に親しむ星林高校の中原夢月(みづき)さんが加わった。

 演目は2作。『富士山』では日本のシンボルの雄大で荘厳な眺めを、合唱のように3人が息をそろえ吟ずる。もう一つ、晩秋の山にかかる白雲と、かえでや夕日の燃えるような赤を歌った『山行』は、中原さんの吟詠に合わせ、向陽の二人が青と赤の扇を手に舞う。大浦さんは「表現力を身に付けたくて始めました。難しいけれど楽しみながら詩の世界を表現できれば」。師範の祖父に吟詠を学んできた中原さんは「『山行』は節回しが難しいが、うまくなったと言ってもらえるよう吟じたい」。

 本番に向け週2日、学外の師範を招き練習を重ねてきた。チームの中心、榎本さんは「伝統的な芸道の世界が皆に伝わるよう、踊りも歌もぴたっと息をそろえて演じます」と張り切っている。

写真=『山行』のラスト決めポーズをとる3人

 

戦の情景 音と力で 郷土芸能部門 りら創造芸術和太鼓部

 郷土芸能部門のトップバッターを務めるのは、紀美野町のりら創造芸術高校和太鼓部。戦国時代の戦をイメージした曲で、全国58校のライバルたちと日本一を競う。1年の伊藤羽心(わこ)さんは「起承転結がしっかりとある曲。見た人が映画を見終わったような感覚になってもらえるものに」と意気込む。

 同部門は演奏技術や演出、衣装などで審査。多くの学校が様々な和楽器演奏、地元に伝わる踊りをまじえて行う中、同校は持ち時間の8分すべて、和太鼓だけで駆け抜ける。2年の中筋翼さんは「たたく強さや自分たちの目線、表情で喜怒哀楽を体現してストーリーを展開します」と話す。

 披露するのは、講師で和太鼓ソリストの嶋本龍さんが1年かけて作った『朱の忍』。真田家の家臣で、のちに敵と味方に別れる横谷左近、重氏兄弟をモチーフにした。舞台の右側と左側の太鼓隊が激しく打ち合い、討ち死にの場面は悲しげな表情と弱くなる音で表現する。2年の藤田晴(てる)さんは「物語の情景が目に浮かぶような、壮大で素晴らしい曲。その魅力を100%引き出す」と熱を込める。

 部活動として2年目ながら、昨年9月の県大会で1位を獲得。2年の烏野蓮庵(れなん)さんは「その1位から絆がより強くなった。曲のイメージと同じく、みんなと戦に向かうつもりで本番に臨む」と闘志をみなぎらせる。

 

青春の1ページにフォーカス 写真部門 信愛2年・渚澤みなみさん

 写真部門では高校生活の一瞬を収めた307作品が並ぶ。このうち、和歌山信愛高校写真部2年、渚澤みなみさんの「窓から覗(のぞ)くWADA」が入賞30作品の一つ、奨励賞に選ばれた。窓の先にいる友人の姿を切り取った4枚1組の作品で、「技術がない分、ストーリー性で勝負しました」とほほえむ。

 高校進学後、写真部に入り、カメラを手にした。紀の国わかやま総文に向け、部活の友人と2人1組で校内を撮影して回った昨年10月、階段脇の小窓に気づいた。のぞくと、自由にポーズをとる友人の姿。思わず、シャッターを切った。

 座ってカメラを構えたり、足をあげたり、手すりを使って体をひねったりする場面の4枚を1組にすることで、物語性を出した。審査員は「窓越しの構図はあまりない。外枠はシンプルにまとまっているが、窓の先にある階段や人物の動きがおもしろい」と高評価。渚澤さんは「窓を見つけた瞬間、これだと思いました。青春の1ページを見てください」と呼びかけている。

写真=受賞作を手にする渚澤さん(左)。同じ写真部で、総文写真部門実行委員長を務める3年の西野直子さん(右)も受賞を喜ぶ

 

一般観覧可能な部門

 全22部門中、一般観覧が可能な部門は次の通り。なお、新型コロナウイルス感染対策のため、人数制限を行う会場もある。

 ◎吟詠剣詩舞…8月4日㊌午前10時〜午後5時5分、和歌山市民会館大ホール。

 ◎郷土芸能…8月3日㊋~5日㊍、和歌山市手平のビッグウェーブでパブリックビューイング。3日は午後1時40分〜5時20分、4日は午前9時半〜午後5時40分、5日は午前9時半〜午後2時10分。

 ◎美術・工芸…7月31日㊏~8月4日㊌、県民文化会館と和歌山市吹上の県立近代美術館・博物館。午前9時半~午後5時、1日㊐は午後2時半~5時。

 ◎新聞…8月3日㊋~6日㊎、和歌山市直川の開智高校。全国の新聞部や新聞委員が作成した学校新聞を展示。3日は午後2時~5時、4日以降は午前9時~午後6時半(最終日は2時半まで)。

 ◎特別支援学校…7月31日㊏~8月2日㊊、和歌山市手平のビッグ愛1階。県内の特別支援学校に通う生徒たちが、美術作品の展示やステージ発表を行う。31日は午後0時半~2時半、1日は午前10時~午後3時15分、2日は午前10時~午後3時半。

 ◎軽音楽…8月4日㊌、午前9時50分〜午後4時、紀の川市粉河のふるさとセンター。

 ◎写真…8月1日㊐〜5日㊍午前9時〜午後5時。橋本市北馬場の橋本体育館。

 ◎文芸…8月1日㊐〜5日㊍、有田市箕島の市民会館。1日は午後1時〜5時、2日以降は午前9時〜午後5時(最終日は正午まで)。

 ◎書道…8月2日㊊〜6日㊎、白浜町の総合体育館。午前9時半〜午後5時、4日㊌は午後1時から、最終日は正午まで。

 ※詳細は「紀の国わかやま総文」HP

(ニュース和歌山/2021年7月31日更新)

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