新型コロナウイルス感染拡大がNPO団体に打撃を与えている。聴覚と視覚両方の障害を持つ人が集う「和歌山盲ろう者友の会」はコロナ禍で収入が途絶え資金難に陥り、スタッフが持ち出しで運営費をまかなう。コロナを乗り越えようと手を打ってきたが、厳しさは増すばかりで、「盲ろう者の居場所をなくしたくない。多くの人に支援をお願いしたい」と呼びかけている。

外出控えで運営費難〜盲ろう者友の会「居場所守りたい」

 盲ろう者の障害には個人差があるが、情報入手、コミュニケーション、移動に困難を抱え、日常生活を送るには触手話を主とした専門的な技法を身につけた通訳介助員の支援が欠かせない。県内に盲ろう者は約300人を数え、高齢者が多い。

 同会は2004年に設立。ある盲ろう者の「同じ障害の友達と喫茶店でお茶を飲み、話がしたい」との望みを受け、支援者が集まった。現在は、みその商店街の店舗を借り、さをり織り工房を運営。県と和歌山市から盲ろう者を支援する通訳介助員養成と派遣事業を受託する。外出機会の少ない盲ろう者が仲間とふれあう貴重な場で、コロナ以前には週3回、7人の盲ろう者が通っていた。

 しかし、昨年からの新型コロナウイルス感染拡大で、工房利用者の足が遠のき、利用料収入がストップした。

 会は月25万円の運営費を、会費や一般からの寄付、通訳介助員から報酬の一部を寄付してもらいまかなっていたが、いずれも入らなくなった。

 追い打ちをかけたのが昨年6月に立ち上げた介護事業と盲ろう者向けの同行援護事業。訪問型支援で打開を図ったが、利用者はなく、負債だけが残る結果となった。

 事務局長の瀬戸節子さんは「昨年は家賃補助や持続化給付金など補助金でもたせてきましたが、限界です」。実施直前だった盲ろう者専用の老人ホーム建設も銀行の融資がストップし、計画は凍結。そのための蓄えも運営費に回し、瀬戸さんは私財を投じて会を支える。行政への協力を求めたが、予算確保には至らない。

 瀬戸さんは「盲ろう者が楽しそうにふれあう姿を目にしていると、ここは守らねばならないと思う。移転も考えており、安く貸してくれる古民家があれば教えてほしい」と訴えている。同会(073・498・7756)。

写真=触手話で盲ろう者とふれあう瀬戸さん(右)

 

厳しい 自主事業団体

 わかやまNPOセンターは今春、新型コロナウイルス感染拡大の影響について市民団体を対象にアンケートを実施した。126団体にたずねたところ、「影響が出ている」は全体の9割。経営面で7割に影響が及んでおり、理由は「活動の縮小による収入減」が35団体、「利用者の減少」が28団体、「会員や会費の減少」が26団体あり、「委託や補助金など行政資金の減額」も10団体を数えた。収入の減少幅は最大800万円に至った。

 同センターの志場久起副理事長は「行政の受託事業を行う団体はダメージが少なく、逆に頑張って自主事業をしてきた団体が利用者減少で影響を被っている」。行政の補助金は焼け石に水の現状で、「外部の支援を求めざるを得ない」とみる。「まちづくりを担ってきたNPOは近年、減少傾向にあり、コロナで加速させる恐れがある。センターでも寄付を呼びかけ、助成の仕組みを充実させたい」と話している。

(ニュース和歌山/2021年9月11日更新)