ピアニスト田中鮎美さん 日本人女性リーダーで初

 ノルウェーを拠点に世界で活動する和歌山市出身のピアニスト、田中鮎美さん(35)が10月29日、自らリーダーを務めるユニットでアルバム『スベイクエアス・サイレンス~水響く』を発表した。ジャズ界でブルーノート・レコードと並ぶ名門、ドイツ・ECMレコードからの発売で、日本人女性がリーダーを務めるジャズユニットが同社からアルバムを発売するのは初めて。

「来年は日本でも公演ができれば」と田中さん ©Amand L.Moraes

 小学校から高校卒業まで電子オルガンを習い、全国大会での優勝経験もある田中さん。和歌山大学時代にピアノへ転向し、卒業後、地道なライブ活動を続け、25歳だった2011年、北欧音楽を学ぶためノルウェー国立音楽大学に入った。在学中、コンサートやジャズフェスティバル出演のほか、アーティストのツアーに同行してアメリカやブラジル、ヨーロッパ各国を回った。

 17年にノルウェーのドラマー、トーマス・ストレーネンさんに誘われ、ECMレコードでの収録に参加した際、同社の設立者、マンフレート・アイヒャーさんと知り合った。アイヒャーさんは以前から田中さんの演奏に興味を持っており、新作を聞いてもらったところ、「素晴らしい音だ」と絶賛され、今回のアルバム製作につながった。田中さんは「昔から聞いてきた音楽を作った人とCDを出せるなんて夢のよう。彼が私の音楽を信じ、世に出してくれたのはありがたいし、あこがれた世界で、尊敬する一流の人たちと仕事ができてうれしい」と喜ぶ。

 新アルバムは全7曲。アメリカのジャズと違い、テンポやビートにとらわれず、息づかいに合わせて演奏する落ち着いた展開が特徴的な北欧ジャズがメーンだ。「曲を聴いている時、耳に入ってくる生活音も、音楽を作る上でひとつの要素だと思っている。あえて余白を作っているので、その時、その瞬間しか味わえない曲を楽しんでほしい」と願っている。

 全国のCD店で販売。2860円。

(ニュース和歌山/2021年11月13日更新)